正規母集団における仮説検定では、母分散に関する検定としてχ²検定、二つの母集団の分散比に関する検定としてF検定が基本となる。これらは標本分散の分布に基づき、分散に関する仮説の妥当性を評価する手法である。
独立同分布な標本
\[X_1, X_2, \dots, X_n \sim \mathcal{N}(\mu, \sigma^2)\]
を考える。母平均 $\mu$ は未知とし、標本分散を
\[S^2 = \frac{1}{n-1}\sum_{i=1}^n (X_i - \bar{X})^2\]
と定義する。
正規母集団において、
\[\frac{(n-1)S^2}{\sigma^2} \sim \chi^2(n-1)\]
が成立する。これはχ²分布への帰着の基礎となる。
母分散 $\sigma^2$ に関する仮説
\[H_0 : \sigma^2 = \sigma_0^2\]
を検定する。
帰無仮説のもとで、検定統計量は
\[\chi^2 = \frac{(n-1)S^2}{\sigma_0^2}\]
であり、
\[\chi^2 \sim \chi^2(n-1)\]
が成立する。
両側検定では、
\[\chi^2 < \chi^2_{1-\alpha/2,\,n-1} \quad または \quad \chi^2 > \chi^2_{\alpha/2,\,n-1}\]
のとき帰無仮説を棄却する。χ²分布は非対称であるため、両側の棄却点をそれぞれ求める必要がある。
対立仮説が
\[H_1 : \sigma^2 > \sigma_0^2 \quad または \quad H_1 : \sigma^2 < \sigma_0^2\]
である場合、棄却域は片側に設定される。
二つの独立な正規母集団
\[X_1, \dots, X_m \sim \mathcal{N}(\mu_1, \sigma_1^2), \quad Y_1, \dots, Y_n \sim \mathcal{N}(\mu_2, \sigma_2^2)\]
からの標本に対し、それぞれの標本分散を $S_X^2$、$S_Y^2$ とおく。独立なχ²変数の比として、
\[\frac{S_X^2 / \sigma_1^2}{S_Y^2 / \sigma_2^2} \sim F(m-1,\, n-1)\]
が成立する。
分散比に関する仮説
\[H_0 : \sigma_1^2 = \sigma_2^2\]
を検定する。
帰無仮説 $\sigma_1^2 = \sigma_2^2$ のもとで、検定統計量は
\[F = \frac{S_X^2}{S_Y^2}\]
であり、
\[F \sim F(m-1,\, n-1)\]
が成立する。
両側検定では、
\[F < F_{1-\alpha/2,\,m-1,\,n-1} \quad または \quad F > F_{\alpha/2,\,m-1,\,n-1}\]
のとき帰無仮説を棄却する。F分布も非対称であるが、上側棄却点のみ表に載っている場合は
\[F_{1-\alpha/2,\,m-1,\,n-1} = \frac{1}{F_{\alpha/2,\,n-1,\,m-1}}\]
の関係を利用する。
観測された統計量に基づいて、帰無仮説のもとでの確率
\[p = P(\chi^2 \leq \chi^2_{\text{obs}}) + P(\chi^2 \geq \chi^2_{\text{obs}}) \quad または \quad p = P(F \leq F_{\text{obs}}) + P(F \geq F_{\text{obs}})\]
を計算し(両側検定の場合)、有意水準と比較する。
正規母集団における分散の検定では、一標本の場合はχ²検定、二標本の分散比の検定にはF検定が用いられる。いずれも標本分散の分布に基づいて検定統計量を構成し、棄却域またはp値により意思決定を行う。両分布は非対称であるため、棄却域の設定には左右それぞれの臨界値を考慮する必要がある。
Mathematics is the language with which God has written the universe.