ガウス分布の導出

ドイツの数学者にして物理学者のガウス[Carolus Fridericus Gauss;1777/04/30-1855/02/23]は天体の測定誤差 $\Delta$ の確率分布 $\phi(\Delta)$ が $\Delta=0$ となり,$\Delta$ の符号は異なっていても絶対値が同じ場合は $\phi(\Delta)$ の値は同じであり,$\Delta$ が最大誤差もしくはそれより大きな値をとるときは $\phi(\Delta)=0$ となるという仮定のもと,\[\phi(\Delta)=\frac{h}{\sqrt{\pi}}e^{-h^{2}\Delta^{2}}\]となると考えました.

ここで,\[h=\frac{1}{\sqrt{2}\sigma}\]です.これを,測定誤差は測定値と測定値の平均値の差であるとして,$\Delta=x-\mu$ とし,\[z=\frac{\Delta}{\sigma}\]とおくと, \[e^{-z^{2}}\]という関数に従うことを見出しました.

このような測定結果からの考察から,真の値からの偏差は正規分布に従うこと,さらには,この考え方が大標本論と結びついて,測定値を多くしていけば正規分布に従うに違いないという考え方が生まれました.

ここで,\[f(x)=e^{-z^{2}}\]この関数 $f(z)$ が確率密度関数であるためには,\[\int_{-\infty}^{\infty}f(z)dz=1\]という関係を満たさなくてはなりません.

ガウス積分の公式を使うと,\[\begin{eqnarray}\int_{-\infty}^{\infty}f(z)dz&=&\int_{-\infty}^{\infty}e^{-z^{2}}dz\\&=&\sqrt{\pi}\end{eqnarray}\]となるので,確率密度関数から分散を求めたとき,$\sigma^{2}$に一致させるということを考慮すると,\[\frac{1}{\sqrt[]{\mathstrut 2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\frac{z^{2}}{2}}dz=1\]という関係が導かれます.

ここで,\[z=\frac{x - \mu}{\sigma}\]と変数変換すると,\[dz=\frac{1}{\sigma}dx\]となることから,結局,\[\frac{1}{\sqrt[]{\mathstrut 2\pi}\sigma}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\frac{(x-\mu)^{2}}{2\sigma^{2}}}dx=1\]となります.

これがガウス分布,あるいは,正規分布[normal distribution]と呼ばれる分布の確率密度関数になります.

ここまで,正規分布[normal distribution]を観測値の誤差から説明してきました.しかし,正規分布[normal distribution]自体は,1733年にド・モアブルが2項分布の極限値として発見したのが始まりです.これとは独立して,ラプラスが1774‐1786年にかけての論文でド・モアブルと同じく,正規分布[normal distribution]を2項分布の極限値として再発見します.ド・モアブルとラプラスと異なり,1809年に誤差分布として正規分布[normal distribution]を発見したのがガウスになります.


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