ワイル代数

ワイル代数[Weyl algebra]

多項式係数の微分作用素がなす乗法が可換ではない環,つまり,非可換環[noncommutative ring]のことをワイル代数といいます.

ワイル代数というのは,物理学の幾何学的基礎付けを行ったヘルマン・ワイル[Hermann Klaus Hugo Weyl;1885/11/09-1955/12/08]に因む名前です.

ワイル代数は,ハイゼンベルグ代数[Heisenberg algebra]とも言われます.

群構造を持つ可微分多様体で,その群構造と可微分構造とが両立するリー群[Lie group]と密接な関係のあり,非結合的な乗法を備えたベクトル空間であるリー代数[Lie algebra]にはいわゆる普通の積がありませんが,そこで積に相当する概念を有するようにリー代数を拡張したものが普遍包絡環[universal enveloping algebra]になります.

リー群の一種のハイゼンベルク群[Heisenberg group]の普遍包絡環の単位元とリー群の中心の生成元とを同一視したものがワイル代数になっています.

これが,ワイル代数は,ハイゼンベルグ代数[Heisenberg algebra]とも言われる理由です.

量子力学における観測可能な事象の全体はワイル代数,あるいは,ワイル代数を拡張したワイル空間になっているということが出来ます.


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