ユリノキ

概要

ユリノキ(百合の木)は、モクレン科(Magnoliaceae)ユリノキ属(Liriodendron)に属する落葉高木である。学名はLiriodendron tulipifera L.であり、北アメリカ東部を原産地とする。チューリップに似た大型の花を咲かせることから、英名ではtulip treeと呼ばれ、和名の「ユリノキ」もこの花の形に由来する。また特徴的な葉の形状から、日本では「ハンテンボク(半纏木)」の別名でも親しまれている。街路樹や公園樹として世界各地で植栽される、大型で成長の早い樹木である。

形態的特徴

樹高は30メートルを超えることもある大型の落葉高木で、まっすぐに伸びる幹と広い樹冠を形成する。葉は互生し、先端部が浅く二裂して独特の四角形に近い輪郭を持つ点が特徴的であり、この形が半纏の裾を思わせることから前述の別名の由来となっている。花は枝先に単生し、緑黄色の花被片が層をなして開くことでチューリップに似た形状を呈する。花被片の基部にはオレンジ色の斑紋があり、多数の雄しべと雌しべが螺旋状に配置される。果実は翼果が集まった集合果(サマラケトゥム)であり、成熟すると個々の翼果が分離して風により散布される。

分布と生態

本種は北アメリカ東部、特にアパラチア山脈周辺の湿潤な広葉樹林を中心に分布する。肥沃で排水の良い土壌を好み、十分な日照が得られる環境で最も良好な生育を示す。成長速度が速く、若齢期には特に旺盛な樹高成長を示す先駆種的な性質を持つ。花は多量の蜜を分泌することで知られ、ミツバチをはじめとする多様な昆虫を誘引する虫媒花としての性質を持つ。北米の在来生態系においては、蜜源植物として、また大型の樹冠を形成する優占樹種として重要な役割を果たしている。

生理・化学的特徴

モクレン科の植物に広く共通する特徴として、樹皮や葉にセスキテルペン類やアルカロイド類などの二次代謝産物が含まれることが知られている。ユリノキの樹皮には苦味成分が含まれ、伝統的に薬用植物として扱われてきた背景がある。また本属は東アジアと北米東部に隔離分布する典型的な周北極要素の系統であり、ゲノム解析によって被子植物の初期分化を理解する上で重要な系統的位置を占めることが明らかとなっている。花蜜の分泌量が多い点も、送粉者を効率的に誘引するための生理的特徴として挙げられる。

人との関わり

ユリノキは、その大型で美しい花と特徴的な葉形から、公園樹や街路樹として世界各地で広く植栽されている。成長が早く大木になることから、材木としても利用されており、加工のしやすさから家具材や建材として重宝されてきた歴史を持つ。日本には明治時代に導入され、街路樹や公園樹として各地に植えられており、東京大学のシンボルツリーとしても知られるなど、教育機関や公共施設のランドマーク的な樹木としても親しまれている。蜜源植物としても評価され、ユリノキの花から採取される蜂蜜が流通することもある。

系統的位置と進化的特徴

ユリノキはモクレン目(Magnoliales)モクレン科(Magnoliaceae)に属し、科内ではユリノキ亜科(Liriodendroideae)ユリノキ属(Liriodendron)に分類される。より広い系統的位置としては、被子植物(Angiosperms)のうちモクレン類(Magnoliids)に含まれる。モクレン類は真正双子葉類(Eudicots)や単子葉類(Monocots)のいずれにも属さない、被子植物の中でも初期に分岐した系統群であり、ユリノキ属を含むモクレン科はこの系統群を代表する分類群の一つである。ユリノキ属は現在では北米東部のLiriodendron tulipiferaと東アジアのLiriodendron chinenseの2種のみから構成される、いわゆる遺存的分布(周北極要素)を示す系統であり、両種は第三紀に広く分布していた祖先系統が、その後の気候変動を経て隔離分布するに至った残存種と考えられている。花被片や雄しべ・雌しべが螺旋状に多数配置される構造は、被子植物の祖先的な花の形態を色濃く残す特徴として、進化学的に重要視されている。


写真のユリノキは,「明治8,9年頃渡来した30粒の種から育った一本の苗木から明治14年に」東京国立博物館本館前庭に植えられたもの.

第2版:2026-07-24.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















植物用語集 ダイウンカク ディジゴセカ・エレガンティッシマ コチョウラン ミルトニア カトレア