フサアカシア

概要

フサアカシア(Acacia dealbata Link)は、マメ科(Fabaceae)アカシア属(Acacia)に属する常緑高木である。オーストラリア原産であるが、香りの良い黄色の花を穂状に多数咲かせる観賞価値の高さから世界各地に導入され、日本を含む温暖な地域で広く植栽されている。「ミモザ」の通称でも知られるが、本来「ミモザ」はオジギソウ属(Mimosa)を指す語であり、本種を含むアカシア属植物への呼称は慣用的なものである。導入先の一部地域では旺盛な繁殖力により侵略的外来植物として問題視されている。

形態的特徴

フサアカシアは常緑高木で、成木では樹高10メートルを超えることもある。葉は羽状複葉で、羽片は10から20対ほどとなり、近縁種のギンヨウアカシア(Acacia baileyana)に比べて葉・花ともに大きい点で区別される。葉の表面には細かい毛が密生し、灰白色を帯びた銀緑色を呈する。

花期は日本ではおおむね2月から4月頃であり、多数の黄色い小花が球状に集まった頭状花序を穂状につける。花には強い芳香があり、雄しべが多数突出することで綿毛状の外観を呈するのが特徴である。果実は豆果で、扁平な莢の中に種子を多数含む。

分布と生態

フサアカシアはオーストラリア南東部を原産地とし、1770年にジェームズ・クックによって発見され、その後ヨーロッパへ持ち込まれた経緯を持つ。現在ではヨーロッパの地中海沿岸、南アフリカ、南米、ニュージーランドなど世界各地の温暖な地域に導入され、観賞用として広く栽培されている。

本種は根粒菌との共生によって窒素固定を行う能力を持ち、やせた土地でも旺盛に生育できる性質を備える。地下茎から生じる吸枝による栄養繁殖と、多量の種子生産の両方によって効率よく分布を広げることができ、攪乱を受けた裸地や道路沿い、河川沿いなどに急速に定着する。この強い繁殖力と競争力により、導入先の自生植生に侵入して在来種の多様性を減少させる事例が各地で報告されており、侵略的外来植物として扱われることも少なくない。

生理・化学的特徴

フサアカシアの花には芳香性の精油成分が豊富に含まれ、香水の原料(ミモザ・アブソリュート)として利用されるほどの強い香気を持つ。マメ科植物に特有の根粒共生による窒素固定能力は、本種の旺盛な成長と、やせ地や攪乱地における高い定着能力を支える生理的基盤となっている。また、他の植物の発芽や成長を抑制するアレロパシー物質を分泌することが指摘されており、これが侵入先での在来植生の減少に関与していると考えられている。

人との関わり

フサアカシアは、その芳香と黄金色の花房の美しさから観賞用樹木として世界的に人気が高く、日本でも公園樹や庭園樹として植栽され、早春の花木として親しまれている。切り花としても流通し、香りの強さから香水の原料としても利用されてきた。19世紀以降、フランスのコート・ダジュール地方は本種の世界的な産地として知られるようになり、冬の避寒地の景観を彩る植物として定着した歴史を持つ。

一方で、旺盛な繁殖力により導入先の自然植生に侵入し、在来種との競合を引き起こす事例が報告されており、緑化樹としての利用にあたっては生態系への影響に留意する必要がある樹種でもある。

系統的位置と進化的特徴

フサアカシアが属するアカシア属(Acacia)は、マメ科(Fabaceae)に分類される。マメ科はマメ目(Fabales)を構成する科の一つであり、真正双子葉類のうちバラ類(Rosids)に含まれる大きな系統群である。アカシア属はかつてネムノキ亜科(Mimosoideae)という独立の亜科に分類されてきたが、近年のマメ科全体を対象とした分子系統解析の結果、この亜科はジャケツイバラ亜科(Caesalpinioideae)に含まれる単系統群、いわゆるミモソイド系統(mimosoid clade)として位置づけられるようになっている。

マメ科植物に広く見られる根粒菌との共生による窒素固定能力は、この科が多様な環境、特に養分の乏しい土壌へ適応的に進出する上で重要な役割を果たしてきたと考えられている。アカシア属における旺盛な繁殖力や高い環境適応力は、こうした共生的窒素固定能力を基盤とした進化的特性の延長線上にあるものと理解される。


第2版:2026-07-27.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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