
ゲンペイクサギ(学名:Clerodendrum thomsoniae Balf.f.)は、シソ科(Lamiaceae)クサギ属(Clerodendrum)に属するつる性の常緑低木である。西アフリカ熱帯地域を原産地とし、白色の風船状に膨らんだ萼から鮮やかな紅色の花冠が突き出す独特の二色花を咲かせることから、観賞用植物として世界的に人気が高い。和名は源平合戦にちなみ、白と赤の対比を源氏と平家の旗色に見立てたことに由来する。
本種はつる性に他物へ巻き付きながら伸びる常緑低木で、原産地では草丈3メートルから4メートルほどに達するが、鉢植えなど栽培条件下ではより小型に仕立てられることが多い。葉は対生し、光沢のある濃緑色を呈する卵形から楕円形で、葉脈が明瞭に浮き出るのが特徴である。
花は枝先に垂れ下がる集散花序をなして密に咲く。萼は5枚の萼片が基部で合着して風船状に膨らみ、白色を呈する。この白い萼の内側から、5枚の花弁が合着した紅色から深紅色の花冠が突き出し、雄しべと花柱が花冠よりも長く突出する。この白と紅の対照的な色彩が本種最大の観賞価値となっている。花期は主に春から秋にかけてで、温暖な環境では周年に近い開花が見られることもある。
ゲンペイクサギの原産地は、カメルーンからセネガルにかけての西アフリカ熱帯地域である。高温多湿な熱帯雨林の林縁部などに自生し、周囲の樹木や構造物に絡みつきながら生育するつる性の生態的特性を示す。
栽培が広く行われる過程で一部地域では逸出し、野生化・帰化した個体群も報告されている。低温には弱く、生育には摂氏10度から13度以上の環境が必要とされるため、温帯地域では温室や室内での鉢植え栽培が一般的である。花の形態は、突出した雄しべと花柱を持つことから、昆虫や鳥類などの送粉者を誘引する構造になっていると考えられる。
クサギ属の植物には、シソ科に広く見られるイリドイド配糖体やジテルペノイド、フラボノイド類などの二次代謝産物が含まれることが知られている。本種の白い萼と紅色の花冠に見られる色彩は、萼における色素の欠如ないし少量の存在と、花冠におけるアントシアニン系色素の蓄積という、組織間での色素合成の違いによって生じていると考えられる。
膨らんだ萼の構造は、開花後もしばらく宿存して花全体を保護する役割を果たしており、これによって花の観賞期間が延長される効果があると考えられている。
ゲンペイクサギは観賞用植物として世界的に高い人気を誇り、鉢植えや温室での栽培のほか、温暖な地域では庭園でトレリスなどに誘引して栽培される。その優美な花姿から、イギリス王立園芸協会(RHS)のガーデンメリット賞を受けるなど、園芸的価値の高さが広く認められている。
日本においても切り花や鉢物として流通し、和名の「源平」の名が示す白と赤の対比は、古くから日本の美意識にも合致するものとして親しまれてきた。近縁種であるクサギ(Clerodendrum trichotomum)とは異なり独特の甘い香りは持たないが、その代わりに花色の鮮烈な対比によって強い観賞価値を発揮している。
クサギ属(Clerodendrum)は、真正双子葉類(Eudicots)のうちキク類(Asterids)に含まれるシソ目(Lamiales)シソ科(Lamiaceae)に位置づけられる。クサギ属はかつてクマツヅラ科(Verbenaceae)に分類されていたが、形態学的および分子系統学的解析の結果、シソ科に含まれることが明らかとなり、1990年代以降に転属が行われた経緯を持つ。
シソ科の中では、クサギ属はキランソウ亜科(Ajugoideae)に属し、その中でもクサギ連(Clerodendreae)を構成する。この亜科にはほかにキランソウ属(Ajuga)やニガクサ属(Teucrium)などが含まれ、クサギ連はクサギ属と近縁のVolkameria属やAegiphila属などから構成される系統群として位置づけられている。膨らんだ萼を持つ花の形態は、クサギ属内の複数の系統で独立に発達してきた形質と考えられており、送粉者との相互作用を通じて多様化してきた本属の進化過程を反映するものとされている。
第2版:2026-07-28.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.