
サンジャクバナナ(学名:Musa acuminata cv. Dwarf Cavendish)は、バショウ科(Musaceae)バショウ属(Musa)に属するバナナの栽培品種である。学名の通り、東南アジア原産の野生種Musa acuminataを起源とする三倍体の栽培品種群であるカベンディッシュ系統に属し、その中でも草丈が低く抑えられた矮性品種として知られる。「三尺」の名は草丈の低さに由来し、強風に強く倒伏しにくいことから、日本を含む世界各地で古くから栽培されてきた品種である。
サンジャクバナナは、葉鞘が幾重にも重なり合って形成される偽茎(仮茎)を持つ大型の多年生草本で、その草丈は一般的なカベンディッシュ系統に比べて著しく低く、1.5メートルから2.5メートル程度にとどまる。若い個体の葉には赤紫色から暗赤色の斑点が現れることがあるが、成熟するにつれてこの斑点は消失し、大型で光沢のある緑色の葉のみとなる。
偽茎の中心から花茎が伸び、先端に大きな赤紫色の苞に包まれた花序を垂れ下げる。雌花群からは種子を持たない単為結果性の果実が房状に発達し、これが食用のバナナとなる。果実は湾曲した円筒形で、成熟すると果皮が黄色に変わり、内部の果肉は柔らかく甘い。本品種は三倍体であるため種子をほとんど形成せず、稔性を欠く性質を持つ。
本品種の基となった野生種Musa acuminataは、東南アジアからその周辺の島嶼部を原産地とする。カベンディッシュ系統自体は、19世紀にカナリア諸島で選抜されたことが起源として知られており、その後世界各地の熱帯・亜熱帯地域へと導入され、商業栽培が広まった。
本品種は草丈が低いことから、台風や強風の被害を受けにくいという生態的・農業的な利点を持ち、沖縄など台風の常襲地域を含む温暖な地域で好んで栽培されている。栄養繁殖によって増殖される三倍体の栄養系(クローン)であるため、遺伝的多様性が極めて限られており、特定の病害に対して脆弱な側面を持つ。
サンジャクバナナを含むカベンディッシュ系統の果実には、成熟過程でデンプンが糖類(ショ糖、ブドウ糖、果糖)へと変換される特徴があり、これが追熟に伴う甘みの増加をもたらす。この果実成熟の過程は植物ホルモンであるエチレンによって制御されており、収穫後の追熟管理においても重要な役割を果たす。
本品種は三倍体であることに起因して花粉および胚珠の稔性が著しく低下しており、種子を形成しない単為結果性の果実をつける。この生殖能力の低下は、果実を食用に適した形質として固定する一方で、遺伝的な組換えによる新品種の作出を困難にしている。
サンジャクバナナは、その草丈の低さゆえに管理や収穫作業が容易であり、また強風による倒伏被害を受けにくいことから、家庭果樹や小規模農園、台風の多い地域での栽培に適した品種として広く利用されてきた。日本では沖縄県をはじめとする温暖な地域で長らく親しまれている品種である。
世界的な商業栽培においては、より草丈の高いカベンディッシュ系統の他品種(グランナインなど)が主流を占めるが、サンジャクバナナは家庭栽培や観賞用としての需要も根強く、鉢植えでの栽培例も見られる。三倍体で種子を持たないという性質は、他の多くのカベンディッシュ系統品種と同様、栽培化の過程で選抜・固定されてきた重要な農業形質である。
バショウ属(Musa)は、単子葉類(Monocots)のうちショウガ類(クレードとしてのCommelinids)に含まれるショウガ目(Zingiberales)バショウ科(Musaceae)に位置づけられる。バショウ科にはこのほかイトバショウ属(Ensete)などが含まれ、いずれも大型の草本性の生活形を共有する系統群である。
サンジャクバナナが属するカベンディッシュ系統は、東南アジアに分布する野生二倍体種Musa acuminataの複数の亜種に由来する遺伝的構成を持つ三倍体栽培品種群である。栽培化の過程では、野生型が本来持つ種子形成能力や苦味成分を減少させる方向への選抜が繰り返され、単為結果性で食用に適した果実を持つ品種群が固定されてきた。この三倍体化と単為結果性の獲得は、バショウ属における長期的な栽培化の歴史を反映する進化的変化として位置づけられている。
第2版:2026-07-29.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.