
Ribes fasciculatum Sieb. & Zucc.スグリ科スグリ属(Grossulariaceae Ribes)。落葉低木。
藪山櫨子と書く。英名はBush May Flower。日本を含む東アジアに分布する在来種である。種小名 fasciculatum はラテン語で「束生する」を意味し、花や枝が束状に集まる本種の特徴を反映している。棘を持ち、春の花と秋の赤い果実を観賞できることから、野生植物としてだけでなく庭木としても利用される。
高さ1〜2m程度に成長する落葉低木であり、株立ち状に分枝してやや粗な樹形を形成する。スグリ属の中では比較的野趣に富む種であり、林縁や低木林に自生する。雌雄異株であり、雌株と雄株が別個体として存在する。春(4〜5月)に淡黄緑色の小花を咲かせ、秋(9〜11月)には小型の赤い果実を結実する。
枝には葉腋や短枝の基部に鋭い棘を生じるのが特徴である。葉は単葉で互生し、円形から浅く3〜5裂することが多く、縁には鋸歯を持つ。葉質はやや薄く、表面は緑色で裏面はやや淡色を呈する。
花は葉腋から短い総状または束生状に出て、小型で淡黄色から黄緑色を帯びる。花弁は目立たず、萼片がやや発達する。雌雄異株のため、雌花は雌しべが発達し、雄花は雄しべが発達する。果実は液果で、成熟すると鮮やかな赤色となり、直径5〜8mm程度の球形を呈する。果頂部には萼の残存片が残る。
同属のコスグリ(Ribes maximowiczii)やノブドウ(別科)と混同されることがあるが、ヤブサンザシは棘を持つこと、果実が赤色の液果であること、雌雄異株であることで識別できる。セイヨウスグリ(R. uva-crispa)も棘を持つが、果実が大型で緑〜黄色となる点で異なる。
| 草丈/樹高 | 1mから1.5m. |
| 葉 | 葉序[phyllotaxis]は互生[alternate].葉身は長さが2cmから6cm,幅が2.5cmから6cm.形状は広卵形. |
| 花 | 花序[inflorescence]は束生花序.放射相称花. |
日本(本州・四国・九州)をはじめ、中国・朝鮮半島など東アジアの温帯域に広く分布する。山地の林縁や疎林、藪地に生育し、半日陰から日向まで幅広い光環境に適応する。比較的乾燥にも耐えるが、適度な湿り気のある土壌でより良好に生育する。
果実はメジロ・ヒヨドリ・ツグミなどの鳥類に食われることで種子が散布される(鳥散布型)。これが主要な繁殖様式であり、鳥類が生息する林縁環境への分布と密接に関係する。
スグリ属植物に共通して、有機酸や糖類を果実中に蓄積し、これが鳥類を誘引する役割を持つ。ヤブサンザシの果実にもアントシアニン系色素が含まれ、成熟に伴って赤色を呈する。また葉や枝にはフェノール性化合物やタンニンが含まれ、食害防御に寄与する。棘の存在も機械的防御として機能する。
ヤブサンザシは野生植物としての利用が中心であるが、果実の観賞価値や自然風の樹形から庭木として植栽されることもある。果実は食用にされることもあるが、スグリ属の他種(例えばセイヨウスグリやクロスグリなど)に比べて利用頻度は低い。棘があるため管理や取り扱いには注意が必要であるが、その反面、防犯植栽や境界植栽として利用されることもある。
スグリ属(Ribes)はスグリ科(Grossulariaceae)に属し、APG IV分類体系ではユキノシタ目(Saxifragales)に位置づけられる。果実は液果であり、鳥類による動物散布に適応した形質を持つ点が特徴である。
ヤブサンザシはその中でも棘を発達させた系統であり、大型草食動物や昆虫からの機械的防御を強化している。また林縁環境に適応した柔軟な生育形態を持ち、光条件の変動に対する可塑性が高い点も進化的特徴といえる。雌雄異株という繁殖様式は、自家受粉を防いで遺伝的多様性を高める戦略として理解されている。

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第2版:2026-04-28.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.