Definition:Plantae
植物とは、現代の系統分類学においては、一次共生によって成立した葉緑体を共有する真核生物群(Archaeplastida)のうち、特に緑色植物系統(Viridiplantae)に相当するものとして用いられることが多い。ただし植物界(Plantae)という学名自体は論者によって Archaeplastida(広義)・Viridiplantae(狭義)・Embryophyta(最狭義)のいずれにも対応づけられており、統一された定義は存在しない。
植物の定義は文脈によって大きく異なり、単一の系統群を指す語として確定しているわけではない。
植物という語は歴史的経緯のために意味が一定しておらず、生物学において最も定義が揺れやすい用語の一つである。そのため、現代生物学では植物という日本語の日常概念と、系統分類学上の厳密な分類概念とを区別して理解する必要がある。
古典的には、植物とは「動かず、光合成を行う生物」を意味していた。これは古代ギリシア以来の伝統的自然観に由来し、アリストテレスらによって生物は「動くもの=動物」「動かないもの=植物」に二分されていた。このため、現在では植物に含まれない:
なども、長らく植物として扱われてきた。
19世紀以降、細胞学・生化学・電子顕微鏡学・分子系統学が発展すると、「動かない」「光合成をする」といった外面的特徴だけでは生物の系統関係を適切に表現できないことが明らかとなった。
例えば菌類は細胞壁を持ち固着生活を行うが、その細胞壁の主成分はセルロースではなくキチンであり、系統的には植物よりもむしろ動物に近縁である。また、褐藻類は海藻として植物的外観を示すものの、ストラメノパイル(不等毛植物門)に属し、緑色植物とは独立した進化系統に位置する。
さらに、葉緑体そのものが独立した原核生物(シアノバクテリアの祖先)が真核細胞に取り込まれた「一次共生」によって成立したものであることが明らかとなり、光合成能の有無だけでは系統的親縁性を論じることができないことが確立された。
このような事情から、現代の分類学では「植物」は単なる生活様式ではなく、共通祖先に基づく系統群として再定義されるようになった。
現在もっとも一般的な狭義の定義では、植物とは Viridiplantae、すなわち緑色植物を指す。この系統群は以下の形質によって特徴づけられる。
Viridiplantae は大きく二つの系統に分かれる。一つは 緑藻植物門(Chlorophyta) であり、淡水・海水・陸上などに広く分布する緑藻類が含まれる。もう一つは車軸藻植物門(Charophyta) であり、淡水性の車軸藻類および陸上植物(Embryophyta)がここに属する。
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.