Definition:Atropine
主にナス科の植物に含まれるヒヨスチアミン(Hyoscyamine)のラセミ体(racemate body;$dl$-ヒヨスチアミン)。
ラセミ体(racemate body)とは、右旋性($d$-体 と 左旋性($l$-体)という、鏡に映したときのように互いに重なり合わない一対の鏡像異性体(エナンチオマー)が、等量(50%ずつ)混合されている状態の物質を指す。
アトロピンの場合も、植物の中にあるときは 左手($l$-体)の形だけだったものが、抽出過程などで半分が 右手($d$-体)の形に入れ替わり、このラセミ体になったものをいう。
$dl$-ヒヨスチアミン($dl$-Hyoscyamine)。トロパンアルカロイドの一種で、$l$-ヒヨスチアミン(左旋性)と $d$-ヒヨスチアミン(右旋性)が等量混ざったラセミ混合物。
分子式: $C_{17}H_{23}NO_3$ 。
ベラドンナ、ハシリドコロ、チョウセンアサガオなどのナス科植物に含まれる。
植物生体内には主に光学活性を持つ $l$-ヒヨスチアミンとして存在するが、抽出・精製する過程で化学的に不安定な部分が回転し、等量の $d$ 体が混じったラセミ化が起こることにより、アトロピンとなる。
アトロピンが体内に入ると、副交感神経の働きをブロックする。これは、ムスカリン受容体拮抗作用(抗コリン作用)と呼ばれる。
アトロピンは $d$体 と$l$体 の混合物であるが、実際にこの受容体に結合して強く作用するのは $l$-ヒヨスチアミン の方。体の中では、この半分($l$体)が主役となって働く。
副交感神経はリラックス・休息を司る神経であるので、アトロピンがそれを阻害することで、体は興奮・戦闘状態に近い反応を示す。体内の副交感神経が働くとき、神経の末端からアセチルコリンという物質が放出され、細胞にあるムスカリン受容体というスイッチに結合する。アトロピンは、このアセチルコリンの代わりに受容体へ先回りして結合し、フタをする。その結果、副交感神経の命令が細胞に伝わらなくなる。
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.