Picrasma quassioides.
被子植物真正双子葉類ムクロジ目ニガキ科[Simaroubaceae Picrasma].雌雄異株の落葉高木.北海道・本州・四国・九州,朝鮮半島,中国,ヒマラヤに分布.
葉は卵状長楕円形,互生で奇数羽状複葉.
和名「ニガキ」はその名のとおり,樹皮および材に強い苦味成分を含むことに由来する.樹皮は乾燥させると日本薬局方収録の生薬の苦木となる.英名では「bitterwood」や「Japanese quassia」とも呼ばれる.
ニガキは,樹高10メートルから15メートル程度に達する落葉性の中高木である.樹皮は灰褐色で滑らかであるが,成木になると縦に裂け目が入ることもある.葉は奇数羽状複葉であり,小葉は対生またはやや互生し,縁に鋸歯を持つ.葉は樹冠に密につき,春にはやや赤みを帯びた若葉が展開する.
花は雌雄異株であり,春から初夏にかけて,小さな緑白色の花を円錐花序に多数つける.花弁は5枚で,雄花は多数の雄蕊を持ち,雌花には発達した子房が見られる.果実は夏から秋にかけて熟す核果であり,黒紫色に熟し,鳥類によって散布される.
ニガキは主に東アジアに分布し,中国,朝鮮半島,日本[本州以南]などに自生する.日本では山地の林縁や雑木林に見られることが多く,明るくやや乾燥した環境を好む.土壌の質には比較的適応性があるが,湿潤すぎる土地では生育が劣る.
ニガキの樹皮や材には苦味成分であるクアッシン類[quassinoids]が豊富に含まれている.これらの成分には,抗菌,抗炎症,駆虫作用などがあるとされ,伝統的に漢方薬や民間薬として利用されてきた.特に整腸薬,食欲増進剤,寄生虫駆除などに応用されることがある.
また,その強い苦味は昆虫忌避作用も持つため,一部では有機農業における天然農薬としての利用も検討されている.
ニガキの材は淡黄褐色で緻密かつ重硬であり,磨くと光沢が出る.ただし,材の流通量は多くなく,特殊用途や細工物,装飾材,あるいは薬用目的での利用が主である.苦味のために薪材としての利用は限定的である.
ニガキ属[Picrasma]はニガキ科の中でも比較的原始的な形質を保っている属の一つであり,アジア・東南アジア・中南米などに数種が分布している.ニガキ科自体はムクロジ目に属するが,近縁科にはセンダン科[Meliaceae]やカエンボク科[Sapindaceae]などがある.
【互生】
alternate phyllotaxis
【奇数羽状複葉】
imparipinnate compound leaf
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.