ダイウンカク

概要

ダイウンカク(大雲閣)は、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)トウダイグサ属(Euphorbia)に属する多肉性の樹木状植物である。属名はEuphorbia、種小名はabyssinicaであり、学名はEuphorbia abyssinica J.F.Gmel.として1791年にドイツの植物学者ヨハン・フリードリヒ・グメリンにより記載された。柱サボテンを思わせる太い多肉質の茎を直立させる姿から観葉植物として人気が高いが、サボテン科ではなくトウダイグサ科に属する植物である。英名ではデザートキャンドル(desert candle)やキャンデラブラスパージ(candelabra spurge)と呼ばれ、日本では別名としてゴシキヤバネショウ、ランガク(巒岳)とも呼ばれる。

形態的特徴

ダイウンカクは常緑の多肉性樹木で、原産地では高さ9から10メートルに達する。幹は短く太く、そこから直立した多数の分枝を伸ばし、全体として広い倒円錐形の樹冠を形成する。茎は円柱状で多肉質であり、断面には3から8本、多くは4から5本の突出した稜を持つ。各稜の縁には対になった小さな棘が連続して並び、コルク質の質感を帯びる点が特徴である。

本種はほぼ無葉状態で生育し、光合成は主に緑色で多肉質な茎の表皮組織が担う。この葉を退化させ茎で光合成を行う姿は、乾燥地に生育するサボテン科植物と外見が酷似するが、両者は系統的に大きく異なる分類群であり、これは同様の乾燥環境に適応した結果として独立に獲得された収斂進化の代表例とされる。挿し木で繁殖させた個体では、野生個体に見られるような主幹と分枝の明瞭な形態的分化が生じにくいことが知られている。

分布と生態

ダイウンカクは、エチオピア、ソマリア、スーダン、エリトリアを中心とするアフリカの角(ホーン・オブ・アフリカ)地域に固有の植物である。急峻な岩がちの丘陵斜面に生育し、標高840から2400メートルの範囲に分布する。生育地では純群落を形成することもあり、局所的には普通種として個体数が多い場所も見られる。エチオピアでは教会の周辺に植栽されている例が多く見られ、生態的な分布と人為的な植栽の両方が現在の分布状況に関与していると考えられている。

乾燥や強い日射に対する耐性が高く、岩場のような排水性の良い痩せた土地でも生育可能である。乳液に含まれる成分の働きにより挿し木からの発根が容易であることも、本種の高い環境適応力と繁殖力を支える生態的特徴のひとつである。

生理・化学的特徴

ダイウンカクをはじめとするトウダイグサ属植物に共通する特徴として、組織を傷つけると分泌される白色の乳液が挙げられる。この乳液には刺激性、毒性を持つジテルペンエステル類が含まれ、皮膚に付着すると炎症や水疱を引き起こし、目に入った場合には一時的、あるいは永続的な視力障害を招く危険性がある。摂取した場合には強い下剤作用を示すことも知られており、取り扱いには注意を要する。

一方で、この乳液にはオーキシンの一種であるインドール酢酸(IAA)という植物ホルモンが含まれていることが報告されている。この成分の存在が、切り離した枝や茎が容易に発根する性質と関連していると考えられており、本種が生垣(生きた垣根)として利用される生態的・生理的背景となっている。

人との関わり

ダイウンカクの木質化した幹は、原産地において薪や建築用材として利用され、屋根材や家具など日用品の材料としても用いられてきた。乳液は伝統医療において薬用に供されることがあり、地域社会に根付いた実用植物としての側面を持つ。

発根の容易さを生かし、枝を挿し木することで生きた垣根として栽培される点も、人との関わりにおける重要な特徴である。観賞用としても評価が高く、柱状に伸びる多肉質の茎とその独特な樹形から観葉植物として世界各地の温室や住宅内で栽培されている。

系統的位置と進化的特徴

ダイウンカクは、被子植物のうち真正双子葉類(Eudicots)のバラ類(Rosids)に含まれるマメ類(Fabids)に属し、キントラノオ目(Malpighiales)トウダイグサ科(Euphorbiaceae)トウダイグサ属(Euphorbia)に分類される。トウダイグサ属は、多数の単性花が集合して1個の両性花のように見える特殊な花序構造、杯状花序(cyathium)を持つことで特徴づけられ、これはトウダイグサ科に固有の派生的な花序形質である。

本種は分類学的にトウダイグサ属の中でもEuphorbia節に位置づけられ、近縁種としてチュウテンカク(Euphorbia ingens)やEuphorbia ampliphyllaなどが知られる。これらはいずれも東アフリカを中心に分布する柱状多肉性の樹木状トウダイグサ属植物であり、単系統群を形成すると考えられている。乾燥地への適応として獲得された茎の多肉化と葉の退化という形質は、系統的に大きく異なるサボテン科植物にも独立して見られる現象であり、異なる系統が同様の環境圧のもとで類似した形態へと進化する収斂進化の好例として、進化生物学的にも重要な研究対象とされている。


第1版:2021-07.
第2版:2026-07-11.

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