ヒルベルト空間

量子力学はシュレディンガー方程式による決定論と観測過程における古典的ではない確率論という二重構造の理論になっています.

この量子力学の数学的理論の中心が複素ヒルベルト空間と線形作用素論というものになります.

そして,私たちが暮らす3次元空間ではなく,抽象的な空間である複素ヒルベルト空間を考え,状態[$|\Psi\rangle$]や物理量[自己共役作用素 $\hat{A}$]を,その上のベクトルや演算子に対応させます.つまり,ある物理量 $\hat{A}$ の状態 $|\Psi\rangle$ における測定結果が,その期待値 $\langle \Psi,\hat{A}\Psi\rangle$ によって表されます.これを演算子形式[operator formalism]といいます.

ヒルベルト空間というのは可算無限次元の線形空間において内積が定義されているものです.

内積[inner product]

数体 $\mathbb{K}$(実数体 $\mathbb{R}$,または,複素数体 $\mathbb{C}$)上の線形空間 $X$ の任意の元 $x,y$ について以下の条件を満たす $\langle x,y \rangle \in \mathbb{K}$ が定まるとき,$\langle x,y \rangle$ を $x$ と $y$ の内積といいます.
  • $\langle x,y \rangle=\langle x,y \rangle^{*}$ 共役対称性:スター記号は複素共役であることを表します.
  • $\langle x,\alpha y+z\rangle=\alpha \langle x,y \rangle + \langle x,z \rangle$ 線形性
  • $\langle x,x \rangle \geq 0$ 正定値性
  • $\langle x,x \rangle =0 \to |x\rangle=0$ 非退化性:自分自身との内積が0ならば,そのベクトルは0ベクトル

なお,ここで,数の集合において,四則演算が定義されているとき,その集合を数体といいます.

ヒルベルト空間[Hilbert space]

数体 $\mathbb{K}$ 上の内積空間 $X$ がノルム $\| x \|=\langle x,x \rangle^{1/2}$ に関して完備であるとき,$X$ をヒルベルト空間といいます.
$\mathbb{K}=\mathbb{R}$ ならば実ヒルベルト空間,$\mathbb{K}=\mathbb{C}$ ならば複素ヒルベルト空間となります.
ヒルベルト空間は $\mathcal{H}$ と表します.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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