summary:
ADMとクロスコネクト[Digital Cross-Connect System, DCS]はいずれも多重化された信号の中から特定のチャネルを扱う機能を持つが,設計目的と運用方法に違いがある.
ADMはある特定の場所においてローカル信号の追加・削除を行うために設計された装置であり,通常は事前に構成された固定的なパス制御を前提とする.これに対してクロスコネクトは,任意の入力と出力の間で時分割チャネルを柔軟に切り替えるスイッチング装置であり,より高次の柔軟性を持つ.クロスコネクトはネットワークの中央集権的な制御下でパス再構成を行うことが可能であるため,大規模な伝送ネットワークの構築や障害時の動的経路変更に適している.
一方,ADMは主にトラフィックの集配信ノードとして機能し,ローカルノードへの接続点として用いられる.
ADMは1980年代後半から1990年代にかけて,SONETおよびSDHの普及とともに登場した.当時の光ネットワークでは,伝送容量が急激に増大していたが,すべての信号を一度復調し,再多重化する構成ではコストや遅延が大きくなるという問題があった.ADMはこの課題に対して,部分的な信号アクセスを可能にする中継ノードとして設計され,光回線網の効率化に寄与した.
2000年代に入ると,ADMの発展形としてROADM[Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer]が登場し,光波長単位での動的ルーティングを可能にする柔軟性が加えられた.
ADMは,以下のような構成要素によって実装される.
構成要素 | 機能 |
---|---|
光受信部[Rx]/送信部[Tx] | 光信号の受信・変調 |
多重/復調回路(Mux/Demux) | SONET/SDH階層構造に従ったTDM処理 |
チャネル選択部 | ドロップするチャネルの識別と抽出 |
パス制御回路 | 選択された信号の通過経路を制御 |
動作上,ADMは入力されたSTM[SDH]やSTS[SONET]信号から,特定のVC[Virtual Container]やVT[Virtual Tributary]を識別し,ローカル回線に渡す.また,同様の形式で外部から入力された信号を多重信号に挿入し,上流回線に送出する.
ADMには低速トリビュータのアクセス制御やパス監視機能も組み込まれており,信号品質や同期の監視を通じた高信頼通信を担保する構造となっている.
Mathematics is the language with which God has written the universe.