WDM

summary:

WDM[Wavelength Division Multiplexing]とは,光ファイバ通信において、異なる波長[すなわち異なる色の光]を用いて複数の信号を一つの光ファイバ上に同時に多重化して送信する技術である.

この技術は電気通信における周波数分割多重[FDM]に類似しており,光スペクトル上の波長を搬送波として利用することによって,帯域の効率的な利用と伝送容量の飛躍的向上を実現する方式である.

WDM[Wavelength Division Multiplexing]とは,光ファイバ通信において異なる波長の光を用いて複数の信号を一つの光ファイバ上に同時に伝送する多重化技術である.各波長チャネルは相互に干渉せず,独立した情報伝送が可能であるため,光ファイバ1芯あたりの伝送容量を数十倍から数百倍にまで高めることができる.これにより,光ファイバの物理的な敷設を増やすことなく,ネットワークのスケーラビリティおよび帯域利用効率を飛躍的に向上させることが可能となる.

WDMは,波長間隔の広狭によりCWDM[Coarse WDM]とDWDM[Dense WDM]に分類される.CWDMはITU-T G.694.2により最大18波長[1270 nm 〜 1610 nm,20 nm間隔]が規定されており,コスト効率が高く短距離用途に適している.一方,DWDMは100 GHz[約0.8 nm]間隔で40チャネル,50 GHz[約0.4 nm]間隔で80チャネル以上を実現する.さらに高密度なシステムでは25 GHz[0.2 nm]や12.5 GHz[0.1 nm]間隔の波長分割も商用化されており,長距離・大容量の幹線ネットワークで利用されている.

WDMの原理は1970年代に提案されたが,当初はレーザの波長安定性や光フィルタの分解能が技術的制約となり,1310 nmと1550 nmの2波長を用いた単純なWDMシステムが主に研究・実験レベルで用いられていた.1980年代初期には,AT&Tによって17 Gbps×2の波長多重システム[1310 nm / 1550 nm]が構築されるなど,基礎的な実装が始まった.

本格的な商用化の契機となったのは,EDFA[Erbium-Doped Fiber Amplifier]の登場である.これは1987年に発明され,1990年にピレリ社[Pirelli & C. S.p.A.,イタリア]傘下のピレリ・オプティカル・システムズ[Pirelli Optical Systems S.p.A.,イタリア]により商用装置として実用化された.EDFAは,波長1550 nm帯の光信号を直接増幅でき,電気変換を必要としないため,長距離にわたる多波長伝送を実現する鍵技術となった.

1990年代初期には,WDM対応の分波・合波装置およびEDFAを統合した商用DWDMシステムが市場に登場し,1995年以降,WDM技術は急速に拡大した.1550 nm帯での高密度波長分割[DWDM]は,当初4波長・8波長の構成から始まり,1996年頃には8波長以上で1000 kmを超える伝送を可能とするシステムが北米や欧州で導入された.これにより,DWDMは大陸間・長距離通信ネットワークの中核技術として定着した.

2000年頃には,DWDMシステムは128チャネル以上の多波長伝送に対応し,1波長あたり10 Gbpsの伝送が標準化された.以後,40 Gbps,100 Gbps,400 Gbpsといった超高速波長あたりの伝送速度が実現されるようになり,さらにはコヒーレント検波と高次変調方式[16QAM,64QAMなど]の導入により,1波長で1 Tbpsを超える実験的伝送も報告されている.

21世紀に入り,flex-grid WDM[柔軟波長グリッド]という新たな概念が登場した.これは,ITU-T G.694.1で規定された固定波長グリッドに代えて,12.5 GHz間隔などの可変波長幅を利用することで,より柔軟でスペクトル効率の高い伝送を可能にする技術である.これにより,サービスごとの帯域要求に応じて柔軟な波長割当が可能となった.

現在では,WDM技術は長距離幹線網,データセンター間通信[DCI],海底ケーブル,次世代PON[WDM-PON]などに広く採用されており,インターネット・クラウド基盤・金融取引システムなどの高信頼・高帯域要求に応えている.さらに,5Gや将来の6Gモバイルネットワークにおけるフロントホール/バックホール回線においても,WDM技術の応用が進んでいる.

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