Theorem:
ここで,
簡略形として,\[\sum_{k=a}^{b} f(k) \approx \int_a^b f(x) \, dx + \frac{1}{2}(f(a) + f(b))\]が用いられる.
離散和を積分で近似するために,各 $k$ に対して区間 $[k, k+1]$ 上でテイラー展開を考える.\[f(x) = f(k) + f'(k)(x - k) + \frac{f''(k)}{2!}(x - k)^2 + \cdots\]ここで,$[k, k+1]$ 上の積分を考える.\[\int_k^{k+1} f(x) \, dx = f(k) + \frac{1}{2} f'(k) + \frac{1}{6} f''(k) + \cdots\]
この式を変形して $f(k)$ を積分と導関数で表すと,\[f(k) = \int_k^{k+1} f(x) \, dx - \frac{1}{2} f'(k) + \frac{1}{6} f''(k) - \cdots\]
総和にして合算すると,\[\sum_{k=a}^{b} f(k) = \int_a^{b+1} f(x) \, dx - \frac{1}{2} \sum_{k=a}^{b} f'(k) + \frac{1}{6} \sum_{k=a}^{b} f''(k) - \cdots\]
これらを整理し,部分積分と導関数の差を使って最終的に以下の形を得る.\[\sum_{k=a}^b f(k) = \int_a^b f(x) \, dx + \frac{1}{2} \left(f(a) + f(b)\right) + \sum_{n=1}^m \frac{B_{2n}}{(2n)!} \left(f^{(2n-1)}(b) - f^{(2n-1)}(a)\right) + R_m\]誤差項の形は,\[R_m = -\frac{1}{(2m)!} \int_a^b B_{2m}(x - \lfloor x \rfloor) f^{(2m)}(x) dx\]
ここで, $B_{2m}(x)$ は周期的ベルヌーイ関数である.
この公式は,$\sum_{k=1}^n \ln k = \ln(n!)$ を積分で近似する際など,スターリングの公式の導出に応用される.
オイラー=マクローリン公式は,18世紀数学史における最も重要な成果の一つであり,解析学の発展における構造的な転換点を示している.この公式は1735年頃,スイスの数学者レオンハルト・オイラーとスコットランドの数学者コリン・マクローリンによって,ほぼ同時期に独立して発見された.両者の発見は,単なる計算技法の発展を超え,数学が個別の技巧的操作から一般理論へと移行し始める過程を象徴している.
18世紀前半は,ニュートンとライプニッツによって確立された微積分学が,本格的に形式化・一般化され,解析学として制度化されていく過渡期にあたる.オイラー[1707–1783]はこの時期にあって最も影響力のある数学者であり,膨大な論文と著作によって,18世紀から19世紀にかけての数学の厳密化,抽象化の流れを準備した.彼はスイスのバーゼルに生まれ,ヤコブおよびヨハン・ベルヌーイのもとで教育を受け,若くして才能を開花させた.
オイラー=マクローリン公式の発見は,17-18世紀の自然哲学において数学が果たしていた実用的役割とも深く結びついている.天体力学,流体力学,弾性論といった物理的現象の解析において,離散的な和[級数]と連続的な積分の関係を記述する必要があり,近似的な手法が求められていた.この公式は,滑らかな関数に対する有限和を定積分と導関数の級数で近似する枠組みを与えるものであり,特にベルヌーイ数を係数として含む点において理論的にも洗練されていた.
ベルヌーイ数そのものは,オイラー以前にヤコブ・ベルヌーイが冪乗和の一般式の研究の中で導入していたものである.オイラー=マクローリン公式はこれらを自然な形で内包することにより,当時の数学において断片的であった数列・級数論,解析学,数論を統合的に結びつける役割を果たした.これは,18世紀数学の大きな特徴である「普遍性の志向」と深く関係しており,個別の公式から一般理論への移行を象徴している.
また,この公式は,厳密な値の導出ではなく,近似的手法に対する理論的裏付けを与えたという意味で,近似理論や数値解析学の発展にも決定的な影響を与えた.これまで厳密解のみに重きを置いていた数学に,系統的に誤差を評価しながら近似解を導出するという新しい発想を持ち込んだ点は,後のフーリエ解析,数値積分,有限差分法などの分野において先駆的であった.
この公式の発展と普及は,18世紀の学術制度の整備とも連動している.当時ヨーロッパ各地で王立学会や科学アカデミーが設立され,数学者たちが国際的なネットワークの中で研究を展開していた.オイラーはサンクトペテルブルク科学アカデミーおよびベルリン科学アカデミーで精力的に活動し,マクローリンもスコットランドのエディンバラ大学で教育・研究を推進した.両者の独立発見は,このような国際的かつ競争的な知的環境の成果とも言える.
数学的な構造としても,オイラー=マクローリン公式はベルヌーイ多項式や周期的ベルヌーイ関数といった概念の自然な一般化を促し,これらは後の関数解析や調和解析の基礎概念へと繋がっていく.特にフーリエ解析との関係は深く,フーリエによる三角級数の理論や,オイラーの扱った無限積・無限和の整合性の問題は,この公式の精神を継承・発展させたものとみなすことができる.
さらに19世紀に入ると,この公式は解析数論においても中心的な役割を果たすようになる.リーマンゼータ関数の研究における積分表示や,スターリングの公式の厳密な導出,さらには初等関数の漸近評価などにおいて,オイラー=マクローリン公式は不可欠の道具となった.その応用はさらに統計力学や量子力学,情報理論といった近現代の応用数学にも及び,離散と連続の架橋としての本質的な役割を担い続けている.
このようにして,オイラー=マクローリン公式は18世紀数学の集大成であると同時に,19世紀以降の厳密化・抽象化された数学体系への扉を開いたものであり,現代に至るまでその数学的精神は多くの分野で息づいている.
Mathematics is the language with which God has written the universe.