Def.:dual space
与えられた有限次元ベクトル空間 $V$ に対して,その双対空間 $V^*$ は次のように定義される.\[V^* := \{ f : V \to \mathbb{R} \mid f \text{ は線形写像} \}.\]すなわち,任意の $f \in V^*$ について, 任意のベクトル $u, v \in V$ およびスカラー $a, b \in \mathbb{R}$ に対して, \[f(a u + b v) = a f(u) + b f(v)\]が成り立つ.
有限次元ベクトル空間 $V = \mathbb{R}^3$ の場合を考える.その中のベクトルは,例えば,\[v = (x, y, z) \in V\]と表される.双対空間 $V^*$ の要素は例えば次のような線形関数[linear functional]で表される.\[f(v) = 2x - y + 3z.\]すなわち,双対空間の要素はベクトルを数値[スカラー]に変換する道具として作用する.
次に,$n$ 次元の実ベクトル空間 $V$ を考え, 基底を列ベクトルでまとめる.\[V = (v_1\ v_2\ \dots\ v_n) \in \mathbb{R}^{n \times n}.\]
双対空間 $V^*$ を, 以下の条件を満たす行列 $F$ の集合として定義する. $F$ が実ベクトル空間 $V$ の双対空間というイメージが湧くかと思う.\[V^\top F = I_n, \quad F = (f^1\ f^2\ \dots\ f^n) \in \mathbb{R}^{n \times n}.\]
ここで各列ベクトル $f^i$ は双対基底の要素であり, 元空間の基底 $v_j$ との積が\[(v_j)^\top f^i = \delta^i_j\]となる.すなわち, $F$ と $V$ の対応する要素の積はクロネッカーのデルタになる.
任意の線形独立な汎関数の組を列ベクトルとして,\[G = (g_1\ g_2\ \dots\ g_n) \subset V^*\]とすると, \[V^\top G = A \in \mathbb{R}^{n \times n}\]となり, ここで $A$ は一般に単位行列ではなく任意の可逆行列である.
この $G$ からデルタ条件を満たす双対基底 $\tilde{F}$ を作るには,\[\tilde{F} = G (V^\top G)^{-1}.\]
確認すると,\[V^\top \tilde{F} = V^\top G (V^\top G)^{-1} = I_n.\]
従って, 基底 $F$ では $V^\top F = I_n$ が成り立ち, 任意の線形独立な汎関数 $G$ からも $\tilde{F} = G (V^\top G)^{-1}$ により, デルタ条件を満たす双対基底を得ることができる.
Mathematics is the language with which God has written the universe.