MindsDB

MindsDBは, 複数のデータベース, ビジネスアプリケーション, ドキュメントベースのソースに対してSQLクエリを実行できるフェデレーテッド・クエリエンジンを提供する.機械学習モデルやLLMは外部サービスや独立した推論APIとして存在するのではなく, 論理的にはデータベースの一部として振る舞う.すなわち, モデルはCREATE MODELによって定義され, SELECT文によって呼び出され, その出力は通常のテーブルと同様にクエリ結果として返される.この点において, MindsDBは「SQLを意味的操作言語へ拡張する層」と位置づけられる.

MindsDBの設計思想は三つの柱から成る.第一に「Connect[接続]」の側面では, 200以上のデータソース統合ハンドラを提供し, PostgreSQL, MySQL, Snowflakeなどのデータベース, GitLab, Slackなどのアプリケーション, 各種ファイル形式へ接続する.第二に「Unify[統合]」の側面では, Knowledge Base[ナレッジベース]によって, 構造化・非構造化データを統合的に扱う.第三に「Respond[応答]」の側面では, 自然言語またはSQLでクエリを実行し, AIエージェントを介して回答を生成する.

アーキテクチャは複数の層から構成される.データコネクタ層は, 拡張可能なハンドラアーキテクチャを採用し, ML Engineハンドラ[OpenAI, LangChain, Lightwoodなど]とデータソースハンドラ[PostgreSQL, MySQL, GitLabなど]の二つのカテゴリに分類される.コアコントローラ層は, ModelController[MLモデルのライフサイクル管理], IntegrationController[データソース接続], AgentsController[AIエージェントの調整], KnowledgeBaseController[ベクトル検索と意味検索]といった主要コントローラで構成される.インターフェース層は, SQL API, HTTP API, Python SDK, Model Context Protocol[MCP]など複数のインターフェースを提供する.特にModel Context Protocolのサポートにより, 標準化されたツールアクセスを実現し, MCP互換の開発ツールとのシームレスな統合を可能にしている.

Knowledge Base[ナレッジベース]は, 自律的なRAGシステムとして機能し, 構造化・非構造化を問わずあらゆるソースからデータを取り込み可能である.ベクトル検索, 埋め込みモデル, リランキング機能を統合し, SQLを通じてアクセスできる.AI Agents[AIエージェント]は, 自然言語の質問を解釈し, SQLクエリを生成し, コンテキストを取得し, 大規模言語モデルを使用して回答を生成する.これにより, 技術的知識がないユーザーでもデータベース操作が可能となる.Chat Interface[チャットインターフェース]は2025年に追加された機能で, 接続されたデータベースやナレッジベースと自然言語で対話可能である.意味理解とSQLクエリを単一の統合体験で提供する.

MindsDBはフェデレーテッド・クエリエンジンとして, データを中央リポジトリに統合することなく, 複数のデータベース, ビジネスアプリケーション, ドキュメントベースのソースに対してSQLクエリを実行可能である.ただし, その真の差別化要因は, 単なるデータ統合ではなく, AIによる意味的変換・予測・生成機能にある.Trinoのように複数DBを高速にJOINすることを主目的とはせず, 既存DBに存在するデータを前提として, その意味的変換・予測・生成を行うことに特化している.

MindsDBのAutoMLエンジンは, モデル開発プロセスのすべての主要ステップを自動化し, 決定木, 勾配ブースティング, ニューラルネットワークなどの複数のアルゴリズムを評価し, 最も効果的なものを選択する.これにより, CREATE MODEL構文で機械学習モデルを定義し, 通常のテーブルと同様にSELECT文で予測を実行できる.MindsDBはオープンソースソフトウェアとして, またホステッド型クラウドサービスとして利用可能で, 組織の要件に応じてオンプレミスまたはプライベートクラウド環境にも展開できる.

Mathematics is the language with which God has written the universe.