フジマメ

概要

フジマメ(藤豆・鵲豆)は、マメ科フジマメ属に属するつる性の植物であり、学名はLablab purpurea(L.)Sweetという。アフリカおよびアジアの熱帯地域を原産とし、古くからインドをはじめとする各地で栽培されてきた歴史の長い豆類の一つである。和名は、上向きに咲く花の形や色合いがフジの花に似ることに由来する。日本ではセンゴクマメ(千石豆)、アジマメ(味豆)などの別名でも呼ばれ、インゲンマメと混同されることも多いが、両者は属を異にする別種である。食用としては莢や種子が利用される一方、莢が紫色を帯びる品種は葉や花も鮮やかな色彩を持ち、観賞用としても人気が高い。

形態的特徴

フジマメは、他物に絡みついて伸びるつる性の植物で、茎の長さは1.5メートルから、支柱を用いた栽培条件下では6メートルほどにまで達する。本来は多年生であるが、日本の気候下では一年生作物として栽培されることが多い。葉は互生し、3枚の小葉からなる3出複葉で、小葉は広三角状卵形をなし、側小葉は左右非対称にゆがんだ形をとる。托葉は葉柄の基部に付着し、葉身は披針形である。全体にほぼ無毛か、葉の両面にまばらな毛を持つ程度である。

花期はおおむね夏から秋(8月から11月ごろ)で、葉腋から直立した総状花序を伸ばし、蝶形花を各節に2から4個ずつ群がってつける。花冠の色は白色または紫紅色を呈し、旗弁は円形、翼弁は広倒卵形で切形の耳状突起を持ち、竜骨弁は直角に近い角度に曲がる特徴的な形状をとる。花後には扁平で先端がくちばし状に曲がった豆果を結び、莢の色は品種によって緑色から紫色まで変異する。莢の中には2から5個ほどの種子が入り、種子の色は白色、黒色、赤褐色など品種により異なる。

分布と生態

フジマメの原産地はアフリカおよび熱帯アジアであり、なかでも東アフリカには、栽培種の祖先にあたる野生型の亜種が分布している。この野生型は莢が比較的小型であるのに対し、栽培化が進んだ系統では莢が大型化するなど、人為選抜による形態的な分化が生じてきた。古くからインドで栽培されたのち、東南アジア、エジプト、スーダンなど熱帯から亜熱帯にかけての広い地域へと伝播し、現在では世界各地の温暖な気候の土地で栽培されている。

生態的には、温暖な気候を好み、生育が速いつる性植物としての性質を持つ。マメ科植物に共通する特徴として、根には根粒菌が共生し、大気中の窒素を固定して植物体に供給する共生関係を築いている。この窒素固定能力により、比較的やせた土壌でも旺盛に生育できるとともに、輪作や間作において土壌の肥沃度を維持する効果も期待される。つる性の茎は他の植物や支柱に巻きついて上方へ伸長し、開けた日当たりの良い環境で特に旺盛な成長を示す。

生理・化学的特徴

フジマメの種子や若い莢には、クマリン類の一種であるスコポレチンや、ラブラボシドと呼ばれるサポニン類が含まれることが知られている。これらの二次代謝産物は、病害虫に対する防御的な機能を担っていると考えられる一方、種子の生薬としての薬効成分としても位置づけられている。また、根における窒素固定は、根粒菌との共生関係のもとでニトロゲナーゼ酵素が大気中の窒素をアンモニアへと還元することにより成り立つ生理現象であり、マメ科植物全般に共通する重要な生理的特徴である。

一方で注意すべき点として、若い莢や十分に加熱していない種子には、レクチン類やサポニン類といった天然毒素が比較的豊富に含まれており、生食や加熱不足のまま摂取すると食中毒を引き起こす可能性が指摘されている。マメ科の種子に広く見られるフィトヘマグルチニンのようなレクチンは、加熱によって毒性が失活するため、食用に供する際には十分な加熱調理が不可欠である。乾燥種子には、たんぱく質や脂質、ミネラルのほか、不溶性の食物繊維も豊富に含まれることが報告されている。

人との関わり

フジマメは、若い莢や種子を野菜として利用する食用作物として、アジアやアフリカの広い地域で古くから栽培されてきた。日本でも家庭菜園などで親しまれ、莢を煮物や炒め物に用いるほか、種子を粥の材料に加えるなど、多様な食べ方が伝えられている。特に成熟した種子は、扁豆(ヘンズ)と呼ばれる生薬として日本薬局方にも収載されており、健胃、解毒、食欲不振や疲労倦怠の改善などを目的として、漢方薬にも配合されてきた歴史を持つ。中国の本草学の文献にも古くからその効能が記されており、白花・白色種子の系統が薬用として特に重視されてきた。

観賞用としての側面も見逃せない。莢が紫色を帯びる品種は、葉や茎までもがスミレ色や赤紫色を帯びる華やかな姿を見せることから、フェンスやパーゴラを彩るつる性の観葉植物として庭園や公共施設でも栽培される。上向きに整然と並んで咲く花の姿も観賞価値が高く、実用性と観賞性を兼ね備えた植物として、多方面で活用されてきた植物であるといえる。

系統的位置と進化的特徴

フジマメは、被子植物の中でも真正双子葉類に属し、その内部のバラ類(rosids)、さらにその中でもバラ目やマメ目などを含む一群(fabids、真正バラ類Iとも呼ばれる)というクレードに位置づけられる。目としてはマメ目(Fabales)に属し、科はマメ科(Fabaceae)である。

マメ科の中では、フジマメ属はマメ亜科(Faboideae、旧称チョウ形花亜科Papilionoideae)に分類され、さらにインゲンマメ連(Phaseoleae)に含まれる。この連には、フジマメ属のほかにインゲンマメ属やダイズ属、ササゲ属など、蝶形花冠とつる性の生活形を発達させた食用豆類が数多く含まれ、農業上重要な作物群を輩出してきた系統群として知られる。マメ科植物全体を特徴づける根粒菌との共生的窒素固定能力の獲得は、この科の進化史における最も重要な出来事の一つであり、養分に乏しい土壌環境への適応や、広範な生育域への拡大を可能にしたと考えられている。フジマメ属は、こうした基盤の上に、つる性という旺盛な成長様式と、莢や種子における顕著な色彩多型を発達させ、東アフリカの野生系統から人為選抜を経て世界各地の栽培品種群へと分化してきた植物であるといえる。

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第2版:2026-07-19.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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