カラテア

概要

カラテア・リエツェイ(Calathea lietzei É.Morren)は、クズウコン科(Marantaceae)に属する多年生の観葉植物である。園芸分野では長らくカラテア属(Calathea)として扱われてきたが、分子系統学的研究に基づく分類の見直しにより、現在の学名はGoeppertia lietzei(É.Morren)Saka とされ、ゲッペルティア属(Goeppertia)に移されている。本稿では通称であるカラテアの名で扱うが、正式な現行学名はゲッペルティア属に基づくものである点をあらかじめ述べておく。細長く白と緑の斑が入る葉が特徴で、「フュージョン・ホワイト」「フュージョン・イエロー」などの園芸品種が広く流通している。なお、なお、市場に流通する「フュージョン・ホワイト」は、実際には近縁の Goeppertia albertii の変異種であるとする見解もありますが、園芸分野では一般に本種の品種として扱われてい

形態的特徴

本種は地下茎を持つ多年生の草本であり、株立ち状に叢生する草姿を示す。葉は細長い披針形から長楕円形を呈し、長さは40センチメートル前後に達する。葉の表面には、緑色を基調として白色ないし淡い緑白色の不規則な斑紋が入り、大理石模様(マーブル模様)と形容される独特の葉柄パターンを示す。葉の裏面は紫色を帯びる点も本種の識別上の特徴である。草丈は品種によって差があるが、おおむね30~60センチメートル程度にとどまる比較的コンパクトな草姿を示す。

本種を含むクズウコン科の植物に広く見られる性質として、就眠運動(夜間に葉が上向きに閉じ、日中に再び開く運動)が挙げられ、本種でもこの葉の昼夜の開閉運動が観察される。花は黄色ないし白色の小さな花をつけるが、室内栽培下では開花が生じることは比較的少ない。

分布と生態

本種はブラジル東部を原産地とし、サンパウロ州(São Paulo State)、リオデジャネイロ州(Rio de Janeiro State)、エスピリトサント州(Espírito Santo State)などにまたがる大西洋岸森林(マタ・アトランティカ、Mata Atlântica、Atlantic Forest)に自生する。熱帯多雨林の林床という、直射日光の乏しい薄暗く湿潤な環境に適応した植物であり、林冠に覆われた高湿度・安定した気温の環境を好む生態を持つ。

原産地以外では観賞用として世界各地で導入・栽培されており、インドネシアのジャワ島などでは、逸出した個体が野生化し、侵略的な外来植物として定着している事例も報告されている。

生理・化学的特徴

本種を含むクズウコン科の植物は、葉柄の基部に葉枕(ようちん、pulvinus)と呼ばれる膨らんだ組織を持つことが知られる。この葉枕内部の細胞は、内部の膨圧(水分による細胞の張力)を能動的に変化させることによって葉の角度を調節し、前述した就眠運動を引き起こす仕組みを担っている。この運動は、日中の光合成に適した葉の展開と、夜間の水分損失や低温からの保護とを両立させる適応機構であると考えられている。

葉の斑紋パターンは、葉緑体の分布密度や色素の局所的な発現差によって生じるものであり、白色や淡色の部分では光合成能力が緑色部に比べて相対的に低下する。そのため、こうした強い斑入りの品種は、無地の緑葉を持つ個体に比べて生育速度がやや緩やかになる傾向がある。

人との関わり

本種は、葉の美しい模様と比較的コンパクトな草姿から、室内観葉植物として世界的に高い人気を持つ。特に「フュージョン・ホワイト」「フュージョン・イエロー」といった強い斑入りの園芸品種は、その大理石模様のような葉が絵画にたとえられるほど観賞価値が高く評価されている。

栽培には、直射日光を避けた明るい半日陰、高い空中湿度、安定した温暖な気温が求められ、これは原産地である熱帯雨林の林床環境を反映した管理条件である。繁殖は主に株分けによって行われる。人体やペットに対する毒性は報告されておらず、安全性の高い観葉植物として扱われている。

系統的位置と進化的特徴

ゲッペルティア属(Goeppertia)は、単子葉類(Monocots)ツユクサ類(Commelinids)ショウガ目(Zingiberales)に含まれるクズウコン科(Marantaceae)に属する。クズウコン科は、ショウガ目の中でも特殊化した葉枕構造による葉の運動能力を持つ点で特徴づけられる系統群であり、この就眠運動は本科の重要な適応形質として進化してきたと考えられる。

本種を含む多くの種は、従来Calathea属に分類されていたが、花序の構造や分子系統解析の結果に基づき、多くの種がゲッペルティア属へと再分類されるに至った。これはクズウコン科内における属レベルの系統関係の見直しを反映したものであり、形態形質のみによる分類から、分子データに基づくより精緻な系統推定への移行を示す事例の一つとして位置づけられる。Goeppertia lietzeiにおける顕著な葉の斑入り形質は、野生下での遺伝的多様性が、栽培選抜を通じて意匠性の高い園芸品種群として展開されてきた一例といえる。


第2版:2026-07-20.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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