
マンゴー(Mangifera indica L.)は、ウルシ科(Anacardiaceae)マンゴー属(Mangifera)に属する常緑高木であり、その果実は世界的に代表的な熱帯果樹として広く食用に供される。原産地はインド北東部からミャンマーにかけての地域とされ、4000年以上にわたる長い栽培の歴史を持つ。仏教においては聖なる樹として扱われ、経典中にもしばしば言及される。学名はカール・フォン・リンネの『植物の種』(1753年)にも記載されており、種小名のindicaは「インド産の」を意味する。
本種は常緑高木であり、原産地における野生の樹高は10~40メートルに達することもあるが、栽培品種では管理された樹高で維持されることが多い。幹はよく分枝し、樹形は全体としてドーム状にまとまる傾向を持つ。葉は互生し、葉柄の長さは3~7センチメートルである。葉身は長披針形から長楕円形を呈し、全縁で、長さ10~30センチメートル、幅4~10センチメートルほどとなる。葉は革質で、表面は濃緑色で光沢を持つのに対し、裏面は黄緑色でやや光沢に乏しい。若葉は赤褐色を帯び、成熟に伴って緑色へと変化する。
花は雌雄同株であり、雄花と両性花が同一の花序に混在する多性花の様式を示す。枝端には長さ10~40センチメートルに及ぶ円錐花序が形成され、一つの花序あたり500~2000個もの小さな花が密集して咲く。萼片は緑色、花弁は黄白色でいずれも5枚からなる。両性花では雄しべの大部分が退化し、通常1本のみが花粉を生じる稔性の雄しべとして成熟する。
果実は核果であり、広卵形を呈するが、栽培品種間での変異が非常に大きく、長さ3~25センチメートル、幅1.5~15センチメートルの範囲に及ぶ。果皮は黄白色、黄色、黄赤色などを呈し、まれに赤紫色の斑点が入るものもある。成熟すると果皮は容易に剥離するようになり、内部の果肉は黄色から橙黄色で多汁である。種子(核)は大きく扁平である。
本種の原産地はインド北東部からミャンマーにかけての地域とされ、そこから長い年月をかけて東南アジア一帯、さらには世界各地の熱帯・亜熱帯地域へと栽培が広まった。現在では、インド、中国、メキシコ、フィリピン、タイ、オーストラリアなど、世界各地の熱帯・亜熱帯地域で広く栽培されている。日本国内では沖縄県を中心に、宮崎県、鹿児島県などでも栽培が行われる。
花の受粉は主にハエ類(Musca)による送粉に依存する虫媒花であり、花序全体が独特の臭気を放つことで送粉者を誘引する生態を持つ。この送粉様式は、送粉者として主に甲虫や蜂類に依存する多くの果樹とは異なる特徴である。生育には高温多湿な気候を好むが、開花期には比較的乾燥した気候が結実を促すとされる。
本種はウルシ科に属し、同科の多くの植物と同様に、樹皮や未熟果、葉などにウルシ類と類似したカテコール系の化学物質を含む。この成分は接触性皮膚炎(かぶれ)を引き起こすことが知られており、マンゴーの摂取や接触によって、いわゆる「マンゴールかぶれ」と呼ばれる皮膚症状が生じる場合がある点は、ウルシ科植物に共通する生理化学的特徴を反映したものである。
果実の成熟過程においては、未熟な緑色の果実に含まれるクロロフィルが分解される一方で、カロテノイド系色素の蓄積が進み、黄色から橙赤色への果皮・果肉の色調変化が生じる。果肉にはプロビタミンAとして機能するベータカロテンや葉酸が豊富に含まれ、これらは本種の栄養学的価値を支える化学的特徴である。また、成熟果実は特有の芳香を持つが、これは複数の揮発性エステル化合物やテルペン類の生成によるものと考えられている。
本種は世界を代表する熱帯果樹の一つであり、生食用としてはもとより、ジュースやピューレ、ドライフルーツ、缶詰、チャツネなどの加工品としても広く利用される。未熟な果実は塩漬けや薬味として調理される地域もあり、花や若葉を食用とする地域も存在する。
栽培の歴史は非常に古く、原産地のインドでは4000年以上前から果樹として栽培されてきたとされる。仏教においては聖なる樹として位置づけられ、経典中にもしばしば言及される。現在では500種以上ともいわれる多様な栽培品種が育成されており、主要な生産国であるインドは世界全体の生産量のおよそ4割を占めるとされる。
マンゴー属(Mangifera)は、真正双子葉類(Eudicots)のうちバラ類(Rosids)に含まれるムクロジ目(Sapindales)に属し、ウルシ科(Anacardiaceae)を構成する属の一つである。ウルシ科は、ウルシやカシューナットなど、樹脂道や乳管に特徴的な化学物質を蓄積する植物を多く含む系統群であり、こうした化学的防御機構の発達は、本科に共通する重要な進化的特徴とされる。
マンゴー属は東南アジアを中心におよそ40種が知られる属であり、本種Mangifera indicaはその中でも最も広く栽培化が進んだ種である。円錐花序に多数の小花を密集させる花序構造と、ハエ類を主要な送粉者とする送粉様式は、本属における繁殖戦略の特徴的な一側面であり、また核果という果実構造は、大型の種子を保護しつつ、動物による種子散布を促す適応形質として進化してきたと考えられる。
第2版:2026-07-20.
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