
トマトは、ナス科(Solanaceae)ナス属(Solanum)に分類される一年生あるいは短命な多年生の草本植物である。学名はSolanum lycopersicum L.であり、南アメリカ大陸のアンデス地域を原産地とする。世界中で最も広く栽培される果菜の一つであり、赤く熟した多汁質の果実は生食のほか、加工食品の原料としても利用され、現代の食生活において極めて重要な位置を占める作物である。
トマトの茎は柔らかく、初期には直立するが、成長するにつれて倒伏性やつる性の傾向を示す品種も多く、栽培では支柱によって誘引されることが一般的である。茎や葉には腺毛が密生し、これを触れると特有の強い香気を放つ。葉は互生し、羽状に深く裂けた複葉状の形態を持ち、小葉には不規則な鋸歯が見られる。
花は集散花序に数個から十数個がまとまって咲き、花冠は黄色で五裂し、星形に開く。雄しべは五本で、葯が互いに接して筒状に合着し、雌しべを取り囲む構造を持つ。この構造は自家受粉を促進する仕組みとして働く。果実は液果で、品種によって球形から扁球形、洋梨形など多様な形状を示し、未熟時は緑色であるが、成熟に伴ってリコピンなどの色素が蓄積し、赤色や橙色、黄色などに変化する。果実内部は複数の子室に分かれ、それぞれにゼリー状の胎座組織に包まれた種子を多数含む。
トマトの野生原種は、南アメリカ大陸西部、現在のペルーからエクアドルにかけてのアンデス山脈の谷間や太平洋岸に自生していたと考えられている。この地域で野生種から栽培型への進化的な選抜が進み、さらにメキシコにおいて現在のトマトに近い大型果実の系統が成立したとする説が有力である。
現在では栽培植物として世界中の熱帯から温帯にかけて広く分布し、露地栽培のほか、温室やハウスを用いた周年栽培も盛んに行われている。生育には十分な日照と適度な水分、排水性の良い土壌を必要とし、低温や多湿の環境には弱い。花は自家受粉性が強いが、ハチ類などによる振動を利用した送粉が結実率を高めることも知られており、施設栽培においては人工的な振動受粉やマルハナバチの導入が行われることも多い。
トマトの果実には、赤色の色素であるカロテノイドの一種リコピンが豊富に含まれ、これが完熟果実の鮮やかな赤色の主な要因となっている。また、ビタミンCやカリウム、グルタミン酸をはじめとするうま味成分も豊富であり、これが生食時の風味や、加工食品の味の基盤となる成分として重要視されている。
一方、トマトの葉や茎、未熟な果実には、ナス科植物に特徴的なアルカロイドの一種であるトマチンが含まれており、これらの部位を大量に摂取した場合には毒性を示すことがある。果実が成熟するにつれてトマチンの含有量は大きく減少するため、通常の食用としての完熟果実には問題はない。生理的には、比較的高い温度条件下で光合成と果実肥大が促進される一方、極端な高温は花粉の稔性を低下させ、着果不良を引き起こすことが知られている。
トマトは、南アメリカ大陸からメキシコを経て十六世紀にヨーロッパへ伝えられ、当初は観賞用植物として扱われていたが、その後徐々に食用としての利用が広まり、現在では世界各地の料理に欠かせない食材となっている。日本には江戸時代に渡来したとされるが、本格的に食用として普及したのは明治時代以降のことである。
生食用のほか、加熱調理用、ソースやピューレなどの加工用として、用途に応じた多様な品種が育成されており、大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトといった果実の大きさによる区分のほか、桃色系や赤色系といった果皮や果肉の色による分類もなされる。近年では、機能性成分であるリコピンの含有量を高めた品種や、糖度を高めた高糖度トマトなど、消費者の嗜好に合わせた品種改良が盛んに行われている。栽培技術の面でも、養液栽培や環境制御技術を用いた大規模施設栽培が発展し、周年供給を可能にする重要な園芸作物としての地位を確立している。
トマトが属するナス属は、被子植物の中でも真正双子葉類、その中でもキク類に含まれ、ナス目(Solanales)ナス科(Solanaceae)に位置づけられる。ナス科はナス属のほかトウガラシ属やジャガイモ属(かつては独立属とされたが現在はナス属に統合される見解が有力)など、多くの重要な栽培植物を含む科である。
トマトは分類学的にはジャガイモ(Solanum tuberosum)などと同じくナス属の中に位置づけられ、両者は比較的近縁な関係にある。かつてトマトは独立したLycopersicon属として扱われてきた歴史があるが、分子系統学的な解析の進展により、この系統群がナス属の中に内包される単系統群であることが明らかになり、現在ではナス属(Solanum)に統合するのが標準的な扱いとなっている。トマトの野生近縁種群は南米アンデス地域を中心に多様な種分化を遂げており、これらの野生種は現在でも高い遺伝的多様性を保持していることから、病害抵抗性や環境耐性の向上を目的とした品種改良における重要な遺伝資源としても利用され続けている。
第2版:2026-07-22.
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