
タンジンは、シソ科アキギリ属(Salvia(Lamiaceae))に属する多年草であり、主として中国を原産とする重要な薬用植物である。学名を Salvia miltiorrhiza Bunge とし、漢方・中医学において「丹参(たんじん)」の名で古くから用いられてきた。種小名 miltiorrhiza はギリシャ語で「赤い根」を意味し、本種の根の顕著な色彩に由来する。特に根部は循環器系に作用する生薬として知られ、現代薬理学においても広く研究されている。
生薬名タンジン(丹参;SALVIAE MILTIORRHIZAE RADIX)として漢方薬として用いられる。
フェナントラキノン類(tanshinoneⅠ,ⅡA,ⅡB,cryptotanshinone,tanshinol I,Ⅱ)、カフェ酸誘導体(lithospermic acid B,salvianoric acid B)を成分として含む。
タンジンは高さ30〜80センチメートル程度に成長する多年草であり、茎は直立またはやや分枝する。葉は対生し、奇数羽状複葉であり、小葉は卵形から披針形で鋸歯を有する。全体にやや粗い毛をもつことがある。
花は春から初夏(4〜6月頃)に開花し、青紫色から紫色の唇形花を穂状または総状に多数つける。シソ科特有の二唇形花冠をもち、上唇と下唇が明瞭に分化する。
根は肥厚し、外観は赤褐色から暗赤色を呈する。この赤色はタンシノン類(ジテルペンキノン系色素)に由来するものであり、本種の重要な識別特徴であるとともに、種小名の由来ともなっている。根が主要な薬用部位として利用される。
原産地は中国北部から中部にかけての温帯域であり、現在では中国各地で広く栽培されている。日本には自生しないが、薬用目的で栽培されることがある。
日当たりの良い乾燥気味の環境を好み、排水性の良い砂質土壌で良好に生育する。比較的耐寒性を有するが、過湿条件には弱い。種子および株分けによって増殖する。
タンジンは多様な生理活性物質を含むことで知られる。主な成分として、脂溶性のジテルペンキノン類(タンシノン類:タンシノンI・タンシノンIIA・クリプトタンシノンなど)および水溶性のフェノール酸類(丹参素〈Danshensu〉・サルビアノール酸Bなど)が挙げられる。
タンシノンIIAは本種中で最も研究が進んでいる成分であり、心筋保護作用・抗炎症作用・抗腫瘍作用などが報告されている。丹参素およびサルビアノール酸Bは強力な抗酸化活性を示し、血小板凝集の抑制や血管拡張作用により循環障害の改善に寄与するとされる。これらの化合物は総体として心血管系への多面的な作用をもつ点で特に注目される。
また、これらの二次代謝産物は植物自身にとっても紫外線防御や病原体への抵抗性に関与する化学的防御機構の一部であると考えられる。
タンジンは中医学において極めて重要な生薬であり、乾燥根が「丹参」として用いられる。中医学上の効能は活血化瘀(血流を改善し瘀血を取り除く)・涼血消癰(熱を冷まし腫れを散らす)・養心安神(心を養い精神を安定させる)の三つに大別される。心疾患・月経不順・血行障害などの治療に広く利用され、丹参飲・冠心II号方など複方処方の構成生薬としても頻用される。
現代においては、有効成分が分離・同定され、医薬品や健康食品としての応用が進められている。また、栽培技術の改良や成分含量の安定化に関する研究も活発である。
タンジンはシソ科(Lamiaceae)アキギリ属(Salvia)に属する。同属は世界最大級の顕花植物の属の一つであり、900種以上が知られ、近年の分子系統解析によって一部の種の分類が再編されつつある大規模な属である。多くの種が精油やフェノール化合物を産生する点で共通しており、化学的多様性に富む。
進化的には、唇形花と特異な雄しべ構造(レバー機構)により、特定の送粉者(主にハナバチ類)との密接な相互作用に適応してきたと考えられる。また、タンジンに見られる多様な二次代謝産物の蓄積は、環境ストレスや生物的圧力への適応として進化したものである。
さらに、人為的な選抜と栽培によって高有効成分系統が維持・発展してきた点も、本種の進化的特性を理解する上で重要といえる。
第2版:2026-05-06.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.