
サンヘンプ(Crotalaria juncea L.)は、マメ科(Fabaceae)タヌキマメ属(Crotalaria)に属する一年生の草本植物である。インド亜大陸原産の作物であり、茎から得られる強靱な靭皮繊維の採取を目的として古くから栽培されてきた繊維作物であるとともに、旺盛な生育と高い窒素固定能を活かした緑肥作物としても世界各地で利用されている。和名としてインドタヌキマメとも呼ばれる。
サンヘンプは草丈2メートルから3メートル、条件によっては4メートル近くにまで達する直立性の一年草である。茎は木質化しやすく、断面はほぼ円形で、内部に強靱な靭皮繊維を豊富に含む。葉は単葉で互生し、長楕円形から披針形を呈し、表面には短毛が密生する。花期は主に夏から秋にかけてであり、茎頂または葉腋に総状花序を形成し、黄色の蝶形花を多数咲かせる。花は比較的大型で鮮やかな黄色を呈し、旗弁には赤褐色の筋状の斑紋が見られることが多い。果実は膨れた豆果であり、成熟すると黒褐色となり、内部で種子が動くと音を立てる性質を持つことから、乾燥した莢を振ると独特の音がする。種子は腎臓形で暗褐色から黒色を呈する。
サンヘンプの原産地はインド亜大陸であり、そこから熱帯および亜熱帯の広い地域へと栽培が拡大してきた。現在ではインド、パキスタン、東南アジア諸国、アフリカ、南北アメリカ大陸など、世界各地の温暖な地域で栽培されている。高温を好む短日性の作物であり、生育適温は高く、霜には非常に弱いため、温帯地域では春から夏にかけての栽培に限られる。生育が極めて旺盛で、播種後短期間のうちに繁茂することから、雑草抑制効果の高い作物としても知られる。根には根粒菌が共生し、大気中の窒素を固定する能力を持つため、痩せた土壌でも良好な生育を示すとともに、後作の土壌肥沃度向上に寄与する。
サンヘンプの茎に含まれる靭皮繊維は、セルロースを主成分とし、強度と耐久性に優れることから繊維原料として評価されてきた。一方で、本種を含むタヌキマメ属植物の種子や一部の栄養器官には、ピロリジジンアルカロイド類が含まれることが知られており、これらの化合物は家畜や人が多量に摂取した場合に肝毒性を示すことが報告されている。このため、飼料としての利用に際しては注意を要する植物とされる。根粒における窒素固定能は非常に高く、短期間で多量の有機物と窒素分を土壌に供給できることから、緑肥作物としての生理的特性が高く評価されている。また生育の旺盛さは、地上部の急速な光合成産物の蓄積と、それを支える発達した根系による水分吸収能力に支えられている。
サンヘンプは、インドを中心に数千年にわたって繊維作物として利用されてきた歴史を持ち、茎から得られる繊維はロープや網、麻袋などの原料として古くから重用されてきた。この繊維は英語で「サンヘンプ」または「インディアンヘンプ」と呼ばれるが、大麻(Cannabis sativa)とは全く系統の異なる植物であり、繊維の用途が共通することから類似の名称が用いられているに過ぎない。現代の農業においては、繊維採取よりもむしろ緑肥・被覆作物としての利用が主流となっており、旺盛な生育による雑草抑制効果、窒素固定による土壌肥沃度の向上、有機物供給による土壌構造の改善といった複数の効果を目的として、輪作体系や休閑期の栽培に広く取り入れられている。また線虫の密度低減効果を持つことも報告されており、土壌病害虫管理の観点からも栽培価値が認められている。
サンヘンプが属するマメ科(Fabaceae)は、真正双子葉類のバラ類に含まれる大きな科であり、マメ目(Fabales)を構成する主要な科の一つである。マメ科の中でタヌキマメ属(Crotalaria)はファボイデア亜科(Faboideae)に分類され、その中でもタヌキマメ連(Crotalarieae)に位置づけられる。タヌキマメ連は、膨れた豆果を形成する点や、旗弁に特徴的な斑紋を持つ種が多い点など、形態的にまとまりのある単系統群として認識されている。タヌキマメ属は熱帯を中心に非常に多くの種を含む大きな属であり、その中でサンヘンプ(Crotalaria juncea)は、繊維採取や緑肥利用の目的で人為的な選抜が加えられてきた栽培化の程度が比較的高い種として位置づけられる。分子系統学的研究においても、タヌキマメ連はファボイデア亜科の中で比較的早期に分岐した系統群の一つとして扱われることが多く、同連内の種間関係についても豆果の形態や花器形質に基づく分類がおおむね支持されている。
第2版:2026-07-31.
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