
Platycladus orientalis(L.)Franco。ヒノキ科コノテガシワ属(Cupressaceae Platycladus)。コノテガシワ属(Platycladus)に属する常緑針葉高木であり、同属唯一の種(単型属)である。
属名 Platycladus はギリシャ語で「扁平な枝」を意味し、種小名 orientalis は「東方の」を意味する。中国北部〜北西部を中心に自然分布するが、古代から広く栽培されてきたため自然分布域と植栽域の判別が難しい種でもある。日本には古い時代に導入され、寺社・庭園に広く植栽されてきた文化的樹種である。和名「コノテガシワ(児手柏、子の手柏)」は、枝葉が子どもの手を広げて立てたように見える独特の樹形に由来する。扁平な鱗状葉・鉤状突起をもつ球果・翼のない種子を特徴とし、乾燥・寒冷への適応性が高く、観賞価値と象徴性を兼ね備えた樹木である。
園芸品種で低木のセンジュ(千手)が知られる。
本種は高さ5〜15 m程度に成長する中高木で、若木では円錐形、成木では密で不規則な樹冠を形成する。枝は上向きに密に伸び、側枝は背腹性をもち扁平で垂直に近い面を形成するため、全体として板状の構造が重なったような独特の外観を呈する。この枝の展開様式は、枝の表裏両面が同質であるという形態的特殊性(等面葉性)を伴っており、ヒノキなど他のヒノキ科樹種との識別点にもなる。
葉は鱗状葉で長さ1〜3 mm程度と小さく、枝に密着して対生的に配列する。葉色は濃緑色で、冬季にはやや褐色を帯びることがある。鱗状葉という形態は蒸散を抑制し、乾燥環境への適応として理解される。
雌雄同株であり、雄球花は春に枝先に形成されて花粉を放出する。球果は長さ1.5〜2.5 cm程度の卵状で、各鱗片の背面中央付近に鉤状の突起(背鉤)をもつことがヒノキ科の中でも特異的な識別形質である。球果は成熟前は青緑色〜粉白色を帯び、成熟すると褐色となって開裂する。
種子は各鱗片に2〜3個つき、翼をもたない(無翼)。ヒノキ科の多くの種が翼のある種子をもち風散布に依存するのに対し、本種の無翼種子は重力散布または動物散布への依存を示唆する形質として注目される。
| 草丈/樹高 | 10m. |
| 葉 | 葉序[phyllotaxis]は対生[opposite].単葉.鱗状葉. |
| 花 | 花序[inflorescence]は毬状花序. |
コノテガシワの自然分布域は中国北部〜北西部(内モンゴル・陝西・山西・甘粛・遼寧省など)および朝鮮半島北部とされるが、中国では少なくとも数千年にわたって寺院・墓地・庭園に植栽されてきたため、現在の分布のどこまでが自然分布でどこからが植栽域かの判別は困難である。日本への導入時期は明確ではないが、中国文化の影響を受けた古代〜中世の寺社建立に伴って持ち込まれたと考えられている。
乾燥に比較的強く、石垣や痩せ地でも生育可能である。耐寒性も高く、幅広い環境条件に適応する。基本的には陽樹的性質をもつが、ある程度の半陰環境にも耐える。
ヒノキ科植物に共通してテルペン系精油成分を含み、葉や材には芳香がある。これらの成分は抗菌性・防虫性をもち、植物自身の防御機構として機能する。材は芳香があり耐朽性が高く、その特性から小規模な木工用途・工芸品・仏具などに利用されることがある。
コノテガシワは中国において道教・儒教的な文脈で霊木・長寿の象徴とされ、古来より廟・墓地・寺院に植えられてきた。孔子廟をはじめとする儒教的聖地にも多く植栽されており、中国文化における象徴的位置づけは深い。この文化的背景は日本にも伝わり、寺社の境内や庭園において象徴的・装飾的に用いられている。
刈り込みへの耐性が高く樹形がまとまりやすいため、生垣・トピアリー・玉仕立てとしても利用される。園芸品種も多く作出されており、矮性・コンパクト形の品種('Sieboldii' など)や黄金葉品種('Aurea Nana' など)が広く流通している。
ヒノキ科(Cupressaceae)は針葉樹の中でも多様な形態を示すグループであり、分子系統解析に基づくAPG体系ではスギ科(Taxodiaceae)を統合した広義の科として整理されている。Platycladus 属は1属1種の単型属であり、形態的にも他属と明確に区別される独自の系統を形成する。なお、分子系統学的な位置づけについては Cupressus(ヒノキ属広義)に統合する見解も存在し、属の独立性については研究者間で意見が分かれている。
枝が垂直面に展開する独特の構造、無翼種子、背鉤をもつ球果鱗片などの形質の組み合わせは、コノテガシワ属を針葉樹の中でも際立ってユニークな系統として位置づける根拠となっている。これらの形質が中国北部〜北西部の乾燥・半乾燥環境への長期的適応の結果として形成されたと解釈すれば、本種は針葉樹における多様な進化戦略の一端を示す好例といえる。

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第2版:2026-04-22
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