アキグミ

概要

アキグミ(Elaeagnus umbellata)は、グミ科グミ属に属する落葉低木である。属名はElaeagnus、種小名はumbellataであり、種小名は「散形花序状の」を意味するラテン語に由来し、葉腋に複数の花が束生してつく様子にちなむ。和名は、秋に果実が赤く熟すことから名付けられたものである。ヒマラヤ山脈からカラコルム、中国、朝鮮半島、日本にかけての東アジアに広く分布し、日当たりの良い河原や荒れ地にしばしば群生する。窒素固定を行う根粒菌との共生によって痩せた土地でも旺盛に生育できることから、緑化樹としても利用される一方、北アメリカなどでは侵略的外来種として問題視される地域もある。

形態的特徴

樹高は2~4メートルほどになる落葉低木で、幹は灰黒色を呈する。枝には鋭い棘を生じることがあり、若枝には銀白色の鱗状毛が密生する。葉は互生し、葉身は長楕円形から披針形で、長さ4~8センチメートル、幅1~3センチメートルほど、縁はやや波打ち、全縁である。若葉の表面には銀色の鱗状毛が密にあるが、生育とともに次第に脱落し、秋にはほとんど見られなくなる。一方、葉の裏面には鱗状毛が敷き詰められたように密生し、銀白色に輝いて見えるのが本種の顕著な特徴の一つである。

花期は春(4~5月ごろ)で、葉腋から1~6個ほどの花が束生し、下向きに垂れ下がって咲く。花弁を欠き、花弁のように見える部分は萼筒が変化したものであり、萼筒は長さ6~7ミリメートルほどで基部に向かって細くなり、先端は4裂して三角形の裂片となる。花色は白色で咲き始め、時間の経過とともに黄色を帯びていく。花には芳香があり、多くの昆虫を誘引する。

果実は偽果で、直径6~9ミリメートルほどの球形を呈し、秋(9~11月ごろ)に赤く熟し、表面には赤褐色や白色の鱗状毛が密生する。果肉は生食も可能であるが、タンニンを多く含むため強い渋みを伴う。冬芽は裸芽で、幼い葉が複数集まった状態で赤褐色の鱗状毛に密に覆われている。

分布と生態

ヒマラヤ山脈やカラコルムから中国、台湾、朝鮮半島、日本にかけての東アジアに広く分布する。日本国内では北海道の道央以南から本州、四国、九州、沖縄まで広く見られ、日当たりの良い河原や道端、林道脇、荒れ地などに群生することが多い。攪乱を受けた裸地にいち早く侵入し、群落を形成する先駆植物としての性質を強くもつ。

根には根粒菌が共生し、大気中の窒素を固定する能力をもつことから、栄養分に乏しい痩せ地や砂地でも良好に生育することができる。この特性を活かし、日本では砂防や治山の緑化工事、海岸の砂地の静砂対策として植栽されてきた歴史がある。一方、北アメリカでは観賞用や緑化用として導入されたのち、各地で野生化し、旺盛な繁殖力から在来植生を圧迫する侵略的外来種として問題視されている地域も存在する。秋に熟す果実は鳥類にとって重要な食物資源となり、種子は鳥散布によって広く運ばれる。

生理・化学的特徴

アキグミの根には放線菌の一種であるFrankia属の共生菌が根粒を形成し、大気中の窒素をアンモニア態に変換する窒素固定を行う。マメ科植物における根粒菌との共生とは異なる系統の微生物との共生であるが、同様に貧栄養な土壌環境への適応を可能にする生理的特性として機能している。

果実にはタンニン類が豊富に含まれるため、生食すると強い渋みを感じる一方、成分としてはリコペンを高濃度に含むことが知られており、その含有量はトマトの数倍から十数倍に達するとされる。また、葉や果実の表面を覆う鱗状毛は、銀色の光沢を放つ特殊な星状鱗片であり、乾燥や強い日射から組織を保護する役割を果たすとともに、本種を特徴づける形態的・生理的形質となっている。近年の研究では、抗酸化作用や抗菌作用、血糖値調節作用など、多様な生理活性をもつ成分が果実や葉に含まれることが報告されている。

人との関わり

アキグミの果実は生食のほか、渋みを活かして果実酒やジャムなどの加工品に利用されてきた。果実酒には下痢止めなどの民間薬的な利用も伝えられている。荒れ地でも旺盛に生育し、挿し木による増殖も容易であることから、砂防・治山工事における緑化樹としても各地で植栽され、庄内海岸をはじめとする砂地の静砂対策にも利用されてきた。

一方で、北アメリカに導入されたアキグミは、旺盛な繁殖力と窒素固定による土壌改変能力により、在来の草本・低木群落を駆逐する事例が報告されており、生態系への影響が懸念される外来種としての側面ももつ。このように、原産地である東アジアでは有用な緑化樹・食用植物として扱われる一方、導入先の北アメリカでは管理が課題となる植物という、地域によって評価の異なる存在となっている。

系統的位置と進化的特徴

アキグミの分類学的位置を、階級を廃した現代の分子系統学(APG体系)の枠組みで示すと、次のようになる。被子植物のうち真正双子葉類(Eudicots)に含まれ、その中でもコア真正双子葉類(Core eudicots)、さらにバラ類(Rosids)に位置づけられる。バラ類の中では、マメ目を含むまとまりであるマメ類(Fabids)に属し、そこからバラ目(学名:Rosales)が分岐する。

バラ目の中で、アキグミはグミ科(学名:Elaeagnaceae)に分類され、グミ属(学名:Elaeagnus)に属する。グミ科はバラ目の中でも比較的小さな科であり、世界に3属おおよそ45~65種ほどが知られ、いずれも葉や果実の表面に特徴的な星状の鱗片毛をもつ点で共通している。

グミ科の植物の多くは、マメ科植物とは系統的に離れた位置にありながら、放線菌であるFrankia属との共生によって根粒を形成し窒素固定を行うという共通の性質をもつ。これは、バラ類の中の複数の系統(グミ科のほか、カバノキ科の一部やバラ科の一部など)において独立に獲得された収斂進化の代表的な事例として知られており、この一群は「窒素固定クレード」として分子系統学的にもまとめて論じられることがある。アキグミが痩せ地や攪乱地に真っ先に侵入し群落を形成できる生態的特性は、こうした窒素固定能力の進化的獲得と密接に結びついたものと考えられている。


第2版:2026-07-10.

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