メギ

概要

メギ(Berberis thunbergii DC.)は、メギ科(Berberidaceae)メギ属(Berberis)に属する落葉低木である。種小名のthunbergiiは、18世紀に日本に滞在して植物調査を行ったスウェーデンの植物学者カール・ペーター・ツンベルグに献名されたものである。和名のメギは「目木」と表記され、枝や根を煎じた汁が古くから洗眼薬として用いられてきたことに由来する。枝には鋭い棘が多く、鳥もとまることができないという意味で「コトリトマラズ」の別名でも呼ばれる。日本に自生する固有種であり、雑木林の林縁など人里に近い環境にしばしば見られるほか、丈夫で樹形が整いやすいことから庭木や生垣としても広く利用されている植物である。

形態的特徴

メギは樹高1メートルから2メートルほどになる落葉広葉樹の低木で、株立ち状によく分枝する。樹皮は灰褐色から褐色を呈し、縦にやや不規則な割れ目が入る。枝は赤褐色から褐色で、顕著な縦の溝と稜が目立つのが特徴である。枝の節や葉の付け根には長さ5ミリメートルから12ミリメートルほどの鋭い棘があり、これは葉が変化したものである。徒長枝につく葉の付け根では、この棘が3本に分かれることもある。

葉は倒卵形から楕円形で、長さ1センチメートルから3.5センチメートルほどの小型の単葉であり、短枝に束生してつく。葉の縁は基本的に全縁であるが、園芸品種には斑入りや赤紫色の葉を持つものも多く作出されている。花期は4月から5月にかけてで、短枝の葉腋から総状または散形状の花序を垂れ下げるように出し、淡黄色で径約6ミリメートルの小さな花を下向きに数個つける。花は3数性で、萼片・花弁ともに6個からなり、雄しべも6個である。秋になると赤く熟す楕円形の液果をつけ、この鮮やかな実と、同時期に色づく紅葉とが、メギの秋の観賞価値を高めている。

分布と生態

メギは日本固有種であり、関東地方以西の本州、四国、九州の冷温帯から暖温帯にかけて分布する。海岸沿いの低地から山間部の草原、雑木林の林縁など、比較的明るく開けた立地を好んで生育する。鋭い棘を密に持つことから、放牧される家畜や野生のシカなどによる食害を受けにくいという生態的な利点があり、こうした場所で他の植物よりも優占しやすい傾向がみられる。日本国内では在来の低木として、雑木林の遷移過程における林縁植生の一員としての役割を担っている一方、北アメリカなど日本国外に導入された地域では、旺盛な繁殖力と鳥による種子散布によって野外に広がり、在来植生や生態系に影響を及ぼす帰化植物として問題視されている例も知られている。

生理・化学的特徴

メギの材は鮮やかな黄色を呈するが、これは植物体に含まれるアルカロイドの一種であるベルベリンによるものである。ベルベリンという物質名自体が、メギ属の属名Berberisに由来して名付けられたものである。この成分はメギのほか、キハダの樹皮やオウレンの根茎など、他の薬用植物にも共通して含まれることが知られている。ベルベリンには強い抗菌作用や殺菌作用があり、これがメギの枝葉を煎じた汁が洗眼薬や食あたりの薬として伝統的に用いられてきた薬理学的な裏付けとなっている。服用によって苦味健胃作用や食欲増進作用も期待されるとされる。また、黄色い材の色調はかつて染料や寄木細工の材料としても利用されてきた。

人との関わり

メギは、和名の由来ともなった洗眼薬としての利用が古くから知られており、枝や根の煎じ汁を結膜炎などの目の炎症に用いる民間療法が各地に伝わっている。同属植物であるオオバメギやヘビノボラズなども、同様に薬用に供されてきた歴史がある。観賞用としては、その密に分枝する樹形と鋭い棘を活かして、生垣や境界の植栽として庭園や公園に広く利用されている。近年では、赤紫色の葉を持つ品種や黄金葉の品種、矮性の品種など多数の園芸品種が育成され、庭木や鉢植えとして親しまれている。海外、とりわけ北アメリカでは観賞用に導入されたのち野外に広がり、旺盛な繁殖力から在来の森林植生への影響が指摘され、管理や防除の対象とされている地域もある。

系統的位置と進化的特徴

メギは、真正双子葉類の中でも早期に分岐した系統群の一つであるキンポウゲ目(Ranunculales)に属し、この目の中のメギ科(Berberidaceae)に分類される。キンポウゲ目は、キンポウゲ科(Ranunculaceae)やケシ科(Papaveraceae)などを含む系統群であり、コア真正双子葉類が分岐する以前に、真正双子葉類の中で最初期に枝分かれした系統の一つとして位置づけられる。メギ科の中では、メギ亜科(Berberidoideae)に属し、その下位にメギ属(Berberis)、種としてのメギ(Berberis thunbergii)が置かれる。

メギ属は世界に約600種を含む大きな属であり、ヒマラヤから中国大陸にかけて特に多くの種が分化している。かつては、葉が奇数羽状複葉になる系統をヒイラギナンテン属(Mahonia)として区別する分類体系も広く用いられていたが、近年の分子系統学的研究では、単葉を持つ狭義のBerberisと羽状複葉を持つMahoniaとが互いに単系統群を形成しないことが示されており、両者を単一のメギ属にまとめる広義の扱いが支持されるようになっている。この点は、葉の形態という一見わかりやすい形質が、必ずしも系統関係を正しく反映するとは限らないことを示す好例として、被子植物の分類における形態形質と分子系統との関係を考える上で興味深い事例となっている。


第2版:2026-07-15.

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