トモエソウ

概要

トモエソウ(巴草、学名はHypericum ascyron L.)は、オトギリソウ科(Hypericaceae)オトギリソウ属(Hypericum)に属する多年生草本である。和名は、花弁が細くねじれるように配列し、風車ないし巴紋を思わせる独特の形状を示すことに由来する。日本に自生するオトギリソウ属の中では最大級の花を咲かせる種として知られ、その大輪の黄色い花は本種を特徴づける最も顕著な形質となっている。

形態的特徴

草丈は50から100センチメートル程度に達し、茎は直立して四稜形を呈し、上部でやや分枝する。葉は対生し、長楕円形から広披針形で柄を持たず茎を抱くようにつき、近縁種のオトギリソウ(Hypericum erectum)に比べて葉身が大きい。葉には透かして見える小さな油点(分泌腔)が多数散在する。

花期は夏であり、茎頂や上部の葉腋に黄色の大きな花を単生ないし少数つける。花の直径は5センチメートル程度に達し、日本に自生する本属植物の中では際立って大きい。花弁は5枚で、細長くねじれるように配列することが多く、この特徴が和名の由来となっている。雄しべは多数あり、基部で5つの束にまとまる点が識別上重要な形質である。花柱は5本に分かれ、これはオトギリソウの3裂とは異なる本種の特徴の一つである。果実は円錐状の蒴果であり、熟すと5裂して微細な種子を多数散布する。

分布と生態

日本各地に分布するほか、朝鮮半島、中国、シベリア東部、さらには北アメリカにまで及ぶ広い分布域を持つ北半球温帯に広がる種である。日当たりの良い山野の草地、湿った草原、河川敷などに生育し、やや湿り気のある立地を好む傾向がオトギリソウよりも強いとされる。

開花期にはハナバチ類などの昆虫が訪花し、花粉を報酬として送粉が行われる。オトギリソウ属に共通する、蜜を分泌せず花粉のみを報酬とする送粉様式を持ち、多数の雄しべはこれに対応した形質と考えられている。種子は微細であり、風や雨滴、流水などによって散布される。

生理・化学的特徴

全草、特に葉や花に見られる油点(分泌腔)には、近縁種であるオトギリソウと同様に、ナフトジアントロン類であるヒペリシンや、フロログルシノール誘導体などの二次代謝産物が含まれることが知られている。これらの成分は光増感作用や抗菌作用を有するとされる。

本種に特化した詳細な成分分析や薬理研究は、オトギリソウやセイヨウオトギリ(Hypericum perforatum)に比べると限られているが、属内に広く共有される化学的防御機構の一端を担っていると考えられている。

人との関わり

トモエソウは民間薬としての利用の歴史も一部知られており、近縁種であるオトギリソウと同様に、全草を止血や健胃などを目的として用いる例が地域によっては見られる。ただしその利用や知名度は、より広く民間薬として定着したオトギリソウに比べると限定的である。

大輪で鮮やかな黄色の花を咲かせることから観賞価値が高く、山野草として愛好家の間で栽培されることがある。切り花としても利用されるほか、庭園の花壇にも植栽される例が見られる。

系統的位置と進化的特徴

本種は被子植物のうち真正双子葉類(Eudicots)に属し、その中でもバラ類(Rosids)と呼ばれる系統群に含まれる。さらに細分すると、キントラノオ目(Malpighiales)オトギリソウ科(Hypericaceae)に位置づけられる。

オトギリソウ属の中でトモエソウが属するグループは、5本に分かれる花柱や多数の花弁を持つ大型の花という形質によって特徴づけられ、近縁のオトギリソウが持つ3裂の花柱とは異なる系統的まとまりを示す。こうした花器官の形質分化は、送粉様式や繁殖戦略の多様化と関連して、オトギリソウ属内で生じた進化的分岐を反映しているものと考えられている。


第2版:2026-07-26.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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