
クマノミズキ(Cornus macrophylla Wall.)は、ミズキ科(Cornaceae)ミズキ属(Cornus)に属する落葉高木である。和名は、三重県熊野地方に多く見られたことに由来する。近縁種であるミズキ(Cornus controversa)に似るが、葉が対生することや開花期が遅いことなどで区別される。丘陵地から山地の谷沿いなど水分条件の良い場所に生育し、成長が速く、伐採跡地などにも旺盛に侵入する先駆的性質を持つ樹種として知られる。
クマノミズキは高さ2から15メートル、まれに25メートルに達することもある落葉高木である。幹は灰白色から灰褐色を呈し、樹皮には浅い縦の裂け目が入る。枝は放射状に斜め上方へ伸び、若い枝には稜がある。冬芽には短毛が密生する。
葉は対生し、長さ6から15センチメートル、幅3から7センチメートルの卵状長楕円形である。葉先は尾状に尖り、基部は広い楔形で、縁は全縁である。葉の両面にはT字形をした伏した毛状突起が見られ、葉裏はやや粉白色を帯びる。葉柄は長さ1から3センチメートルで、葉身の長さに比べて短いことが、近縁種のミズキとの識別点の一つとなっている。
花は直径8から10ミリメートルで、上向きに高く伸びる散房花序に多数つく。花弁は黄白色から乳白色で4個、長さ4から5ミリメートルであり、雄しべも4個で花糸は太い。開花期は6月から7月頃で、近縁のミズキよりおよそ1か月遅れて咲く点が特徴的である。果実は核果で、10月頃に濃い紫色から黒色に熟す。
クマノミズキは日本では本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾、さらにインド、ネパール、ブータン、ミャンマー、アフガニスタンにまで及ぶ広い分布域を持つ。丘陵地から山地の林内、特に谷沿いなど水分条件の良好な場所を好んで生育する。
成長は速く、条件のよい立地では一年間に1メートル以上伸長することもある。攪乱を受けた伐採跡地などにも旺盛に侵入し、急速に大きくなる先駆的な性質を示す樹種と考えられている。材質は柔らかく、カミキリムシ類などによる食害を受けやすい。
ミズキ属の植物は一般に、樹皮や葉にイリドイド配糖体やタンニン類を含むことが知られており、本種についてもこうした系統的に共通する化学的性質を有すると考えられる。材は含水率が高く柔軟であることが特徴で、これは近縁種のミズキと共通し、和名の「水木」という呼称の由来にもつながる性質である。本種に特化した詳細な薬理・化学的研究報告は限られている。
クマノミズキは材が柔らかく加工しやすい一方、カミキリムシ類の食害を受けやすいため、大径の良材として利用される機会はミズキに比べて限られる。近縁種のミズキと同様に、こけしや木工細工、箸などの小物の材料として利用されることがある。谷沿いの林道沿いなどで初夏に棚状に広がる白い花序を咲かせる姿は観賞価値があり、山地を歩く際に目を引く樹木の一つとして親しまれている。
クマノミズキが属するミズキ属(Cornus)は、ミズキ科(Cornaceae)に分類される。ミズキ科はミズキ目(Cornales)を構成する科の一つであり、真正双子葉類のうちキク類(Asterids)の基部に位置する系統群として知られる。ミズキ目は、コア真正キク類が多様化する以前に分岐した初期系統の一つであり、被子植物の進化史における真正キク類の起源を考える上で重要な位置を占める。
ミズキ属の内部分類については研究者によって見解が分かれ、狭義のミズキ属(Cornus)に加えて、対生葉を持つ一群をSwida属として分ける扱いも用いられてきた。本種の学名としてSwida macrophylla(Wall.)Sojákが充てられることがあるのは、この立場に基づくものであり、現在広く採用されている標準的な扱いでは、これはCornus macrophylla Wall.のシノニムとされている。
第2版:2026-07-27.
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