
Chamaecyparis pisifera cv. Plumosa Aurea.ヒノキ科ヒノキ属(Cupressaceae Chamaecyparis)。常緑低木。
サワラ(椹;Chamaecyparis pisifera)の園芸種。ニッコウヒバ[日光檜葉]、オウゴンシノブヒバ[黄金忍檜葉]ともいう。サワラ(Chamaecyparis pisifera(Siebold & Zucc.)Endl.)に由来する園芸品種の一つである。葉に黄白色の斑点状の模様が現れる斑入り変異を持つ選抜系統であり、自然種ではなく栽培下で維持される園芸植物である。
名称の「ホタル」は、葉上に散る小さな明るい斑がホタルの光のように見えることに由来する。サワラの園芸品種には本種のほかにも多様な葉形・葉色の品種が知られており、糸状の葉を持つイトヒバ('Filifera')、綿毛状の葉を持つワタヒバ('Squarrosa')なども同じサワラを親種とする。
ホタルヒバは常緑低木から小高木状を呈し、細かく分枝した繊細な樹形を持つ。親種サワラと同様に鱗片葉を密生させた扁平な枝を持つが、成長はやや緩やかである。
葉は扁平な鱗片状で枝に密着して対生状に配列する。サワラの鱗片葉はヒノキに比べて葉先がやや尖って開出する点が特徴であり、ホタルヒバにもこの特徴が受け継がれている。葉裏にはサワラ属に特徴的な白色のX字形またはY字形の気孔帯が現れる。最大の観賞上の特徴は葉面に現れる不規則な黄白色の斑であり、全体として「光が散るような」外観を形成する。この斑は葉緑体の部分的欠損または機能低下に起因するキメラ的性質によるものが多い。
球果は小型で、直径6〜8 mm程度の木質球果であり、親種サワラの球果に準じた構造を持つ。サワラの球果はヒノキのものより小さく、種鱗の数も少ない点で区別される。
| 草丈/樹高 | 5m. |
| 葉 | 葉序[phyllotaxis]は十字対生.鱗状葉. |
| 花 | 花序[inflorescence]は単頂花序. |
ホタルヒバは自然分布する植物ではなく、園芸的に作出・維持される栽培品種である。親種サワラの自然分布域は日本の本州・四国・九州であり、主に山地の湿潤な谷筋や沢沿いに自生する。ヒノキが尾根筋や乾燥した斜面を好むのに対し、サワラはより湿潤な立地を好む点が対照的である。
ホタルヒバは庭園・寺社・公園などの植栽として広く利用される。耐陰性は比較的強く、半日陰から日向まで幅広い環境に適応するが、斑入り部分は光合成能力が低いため、過度の日陰では全体的な生育が弱まる傾向がある。
ホタルヒバは常緑針葉樹として年間を通じて光合成を行うが、斑入り部分では葉緑体の欠如により光合成効率が低下する。同一個体内でも生理活性に不均一性が生じる点はフイリブキやホタルヒバに共通した斑入り植物の特性である。
斑入り形質は細胞レベルでのキメラ構造や葉緑体形成の不安定性によって維持されることが多く、挿し木・接ぎ木などの栄養繁殖によって形質が保存される。種子繁殖では斑入り形質が安定して遺伝しない。
化学的には、サワラを含むヒノキ属植物に特徴的な精油成分(テルペノイド類)を含み、特有の芳香を持つ。これらは抗菌性・防虫性に寄与し、樹体の防御機構として機能する。
ホタルヒバは観賞価値の高い園芸植物として広く利用される。黄白色の斑が生み出す明るく軽やかな印象は、和風庭園・洋風庭園のいずれにも適応し、景観的アクセントとして重用される。成長が緩やかで剪定にも耐えるため、庭木・生垣・鉢植えとして利用される。
なお、親種サワラはヒノキと同様にヒノキ科植物であり、花粉症の原因植物となりうる。ホタルヒバも雄性個体では花粉を生産しうるため、花粉飛散期には留意が必要である。
木材利用や造林への利用は行われず、あくまで園芸的価値に特化した存在である。
ホタルヒバは球果植物(針葉樹類、Coniferales)に属し、ヒノキ科(Cupressaceae)、ヒノキ属(Chamaecyparis)に分類されるサワラ(Chamaecyparis pisifera)の園芸変異である。
ヒノキ属はヒノキ・サワラ・アスナロなど日本に複数種が自生し、いずれも鱗片葉と精油腺の発達を特徴とする。サワラはその中でも湿潤環境への適応が顕著な種であり、ホタルヒバはその遺伝的変異を人為選抜によって固定した品種である。
ホタルヒバの斑入り形質は自然選択による適応ではなく人為選抜によって維持される変異であり、進化的には中立またはやや不利な形質である。しかし園芸的選好によって保存・増殖されている点に特徴がある。

裸子植物>針葉樹類>ヒノキ目>ヒノキ科>ヒノキ属


第2版:2026-04-27.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.