Definition:
特性関数とは確率変数の分布を複素指数関数の期待値として表したものである.確率変数 $X$ の特性関数を $\varphi_X(t)$ ,または, $\varphi(t)$ と表すとき,特性関数は,\[\varphi_X(t):=\mathbb{E}\big[e^{\mathrm{i}tX}\big],\qquad t\in\mathbb{R},\]と定義される.
特性関数はモーメント生成関数と似るが,複素指数を用いるため常に定義される点で異なる.
一般的な基本性質として,特性関数は常に存在し,値は複素数であって絶対値は1以下に抑えられる.すなわち\[\varphi_X(0)=1,\qquad |\varphi_X(t)|\le 1\quad(\forall t\in\mathbb{R}).\]また $\varphi_X$ は連続で一様連続である.実値確率変数 $X$ に対しては共役対称性が成り立ち,\[\varphi_X(-t)=\overline{\varphi_X(t)},\]が成り立ち,したがって実部は偶関数,虚部は奇関数である.
モーメントとの関係については,もし $\mathbb{E}[|X|^k]<\infty$ ならば $\varphi_X$ は $k$ 回微分可能であり,\[\varphi_X^{(k)}(0)=\mathbb{E}\big[(\mathrm{i}X)^k\big]=\mathrm{i}^k\mathbb{E}[X^k]\]が成り立つ.
独立性と畳み込みに関する性質として,独立な確率変数 $X$ と $Y$ に対して和の特性関数は個々の特性関数の積で表される:\[\varphi_{X+Y}(t)=\varphi_X(t)\,\varphi_Y(t).\]
特性関数は分布を一意に定める.ルヴィの連続性定理により,確率分布列の弱収束は対応する特性関数の点ごとの収束に同値である(極限関数が $t=0$ で連続であることを含む).また特性関数から分布を復元するための反転公式が存在し,特性関数が可積分であれば確率密度関数 $f$ が存在して\[f(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-\mathrm{i}tx}\varphi_X(t)\,\mathrm{d}t\]が成り立つ(適切な正則性条件のもとで).より一般的にはルヴィの反転公式により分布関数を復元できる.
理論的補助として,ボッホナーの定理により連続で正定値かつ $\varphi(0)=1$ を満たす関数は確率測度の特性関数となる.また無限可分分布に対するレヴィ=ヒンチン表示により特性関数の対数表示で無限可分性の要素を明示できる.
代表的な分布の特性関数の例を挙げる.正規分布 $X\sim\mathcal{N}(\mu,\sigma^2)$ では\[\varphi_X(t)=\exp\big(\mathrm{i}\mu t-\tfrac{1}{2}\sigma^2 t^2\big).\]ベルヌーイ分布 $X\sim\mathrm{Bernoulli}(p)$ では\[\varphi_X(t)=1-p + p e^{\mathrm{i}t}.\]ポアソン分布 $X\sim\mathrm{Poisson}(\lambda)$ では\[\varphi_X(t)=\exp\big(\lambda(e^{\mathrm{i}t}-1)\big).\]コーシー分布(位置 $\mu$,尺度 $\gamma>0$)では\[\varphi_X(t)=\exp\big(\mathrm{i}\mu t-\gamma |t|\big).\]
モーメント母関数(MGF)との関係は複素解析的に表現され,もし $M_X(s)=\mathbb{E}[e^{sX}]$ が $s=0$ の近傍で定義されるならば\[M_X(s)=\varphi_X(-\mathrm{i}s)\]が成り立つ.ただし MGF は常に存在するとは限らない点に注意が必要である.
応用上は中心極限定理の証明や和分布の解析,無限可分分布の研究,分布同定といった領域で特性関数が強力な道具となる.特性関数を用いることで畳み込みを乗算に還元でき,理論的および計算的に多くの利点が生じる.
Mathematics is the language with which God has written the universe.