
フェイジョア(Acca sellowiana(O.Berg)Burret)は、フトモモ科(Myrtaceae)アッカ属(Acca)に属する常緑低木または小高木であり、南米原産の果樹である。原産地はブラジル南部、ウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチン北部などの温暖〜冷涼な高原地域であり、現在では世界各地の亜熱帯〜温帯地域で栽培される常緑低木であり熱帯果樹*。
芳香性の果実を食用とするほか、美しい花と銀白色を帯びた葉を有するため、観賞樹としても人気が高い。英語では「Pineapple Guava」とも呼ばれ、パイナップルやグアバを思わせる独特の香気を特徴とする。属名・種小名ともにブラジルの植物学者ジョアン・ダ・シルバ・フェイジョー(João da Silva Feijó)およびドイツの植物採集家フリードリヒ・セロー(Friedrich Sellow)への献名に由来する。
ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、イスラエルなどでは庭木や公園樹として広く利用される。
同一または類似の遺伝子型を持つ個体同士では結実しない。つまり,遺伝的に異なる個体間で受粉しないと結実しない自家不和合性(self-incompatibility,SI)であることが知られている。
フェイジョアは通常2〜5メートル程度に成長する常緑低木であり、よく分枝して密な樹冠を形成する。樹皮は灰褐色で、老木ではやや剥離することがある。
葉は対生し、楕円形から長楕円形で、長さ3〜7センチメートル程度である。葉表面は濃緑色でやや光沢を有し、裏面は白色の綿毛状軟毛に覆われる。この銀白色を帯びた葉裏は本種の顕著な特徴であり、属名 Acca および種の識別においても重要な形質である。
花は春から初夏(日本では概ね5〜6月頃)に開花し、肉厚の白色〜淡紅色の花弁と多数の鮮紅色雄しべをもつ美しい花を形成する。花弁は4枚で内面が紅色を帯び、多肉質であり、鳥類が花弁を食べることで送粉に寄与するという特殊な送粉様式をもつ。雄しべは多数で長く、花弁から大きく突出する。
果実は楕円形から卵形で、長さ4〜8センチメートル程度になる。成熟すると緑色のまま木から落下することで収穫適期を示し、内部には芳香性果肉を含む。果肉はゼリー状の中心部分と、その周囲を囲む粒状(顆粒状)の部分からなり、甘酸味と強い芳香を有する。種子は小型で多数含まれる。
原産地は南米南東部の高原地帯(標高1,000〜1,500メートル程度)であり、比較的冷涼な亜熱帯〜温帯気候に適応している。現在ではニュージーランド、アメリカ西海岸(カリフォルニア州など)、地中海沿岸、コーカサス地方、日本などで栽培される。
温暖で日当たりの良い環境を好むが、比較的耐寒性が高く、概ねマイナス10〜12℃程度まで耐えるとされる。ただし、幼木や新芽は低温に弱く、開花期の晩霜が結実に影響することがある。乾燥にもある程度強いが、果実生産には生育期の適切な水分供給が望ましい。
送粉は主として鳥類(ヒヨドリ類・ミツスイ類など)および昆虫によって行われる。特に花弁を食べに訪れた鳥類が雄しべに触れることで花粉を運ぶという、花弁食型送粉(anthophagy型)が知られる。自家結実性を示す系統もあるが、一般には異品種間の交差受粉によって結実率・果実品質が向上するため、2品種以上の混植が推奨される。
フェイジョアの葉裏に見られる綿毛状白色軟毛は、強光反射・蒸散抑制・過熱防止に寄与する適応形質と考えられ、原産地の高原環境における強日射と季節的乾燥への対応として理解される。
果実の独特な香気はエステル類(酢酸エチルなど)やテルペン類などの揮発性芳香成分によるものであり、パイナップル・イチゴ・グアバを混合したような香りと形容されることが多い。また、メトキシシンナメート(methyl cinnamate) が主要香気成分の一つとして知られる。
果実にはビタミンC、食物繊維、ポリフェノール類を含み、抗酸化活性が報告されている。また、葉および果皮にはフラボノイド類(クエルセチン、ルチンなど)が比較的豊富に含まれ、健康機能性への関心も高まっている。
フトモモ科植物に共通する精油成分(1,8-シネオールなど)やフェノール性化合物も含まれ、抗菌・防御化学物質として機能している可能性がある。
フェイジョアは果樹として栽培され、生食、ジャム、ジュース、デザート、果実酒などに利用される。果実は追熟によって香気・甘味が増し、収穫後数日で最良の風味に達する。果皮はやや苦味をもつため、通常は果肉部分のみを食べる。
花弁は多肉質で甘味をもち、生食または料理のトッピングとして利用されることもある。
観賞樹としても優秀であり、銀葉、花、果実を同時に楽しめる庭園樹として人気がある。刈り込みに比較的強いため、生垣や目隠し植栽として利用される場合もある。
ニュージーランドでは商業果樹として大規模栽培されており、'Unique'・'Mammoth'・'Apollo' など多数の選抜品種が育成され、加工食品産業とも結び付いている。日本では近年、家庭果樹・庭園樹として普及が進んでいる。
フェイジョアはフトモモ科(Myrtaceae)アッカ属(Acca)に属する。かつては Feijoa sellowiana O.Berg として広く扱われていたが、現在では Acca sellowiana(O.Berg)Burret が正式な学名として採用されている。アッカ属は南米に数種のみが知られる小規模な属である。
フトモモ科は南半球を中心に多様化した大規模植物群であり、ユーカリ属(Eucalyptus)、フトモモ属(Syzygium)、グアバ属(Psidium)、ティーツリー属(Melaleuca)などを含む。
進化的には、多肉質花弁の発達と花弁食型送粉の組み合わせが特筆される。これは花蜜を誘引物質とする一般的な送粉戦略とは根本的に異なり、花弁そのものを報酬として提供することで鳥類を誘引し、訪花時に雄しべへ接触させるという精巧な共進化的戦略である。
また、比較的冷涼な亜熱帯高地への適応によって高い耐寒性を獲得した点は、熱帯起源のフトモモ科としては際立った特徴である。芳香性果実は動物散布(主に哺乳類・鳥類)に対応した適応と考えられる。
第2版:2026-05-10.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.