
オジギソウ(含羞草、Mimosa pudica)は、マメ目(Fabales)マメ科(Fabaceae)ミモサ属(Mimosa)に属する匍匐性の一年草または多年草である。葉に触れると小葉が瞬時に閉じ、葉柄全体が垂れ下がるという顕著な接触傾性運動を示すことで広く知られ、この性質から英語では「センシティブ・プラント」、和名では丁寧にお辞儀をする姿になぞらえて「オジギソウ」と呼ばれる。中央・南アメリカを原産地とするが、現在では観賞用および実験材料として世界各地で栽培され、一部地域では野生化もしている。
本種は地表を這うように広がる茎を持ち、茎にはまばらに小さな刺が生じる。葉は二回羽状複葉であり、細長い小葉が多数対になって並ぶ繊細な形状を示す。花は淡紅紫色の小花が球状に密集して形成する頭状花序であり、多数の突出した雄しべが花全体を綿毛状に見せる、マメ科ネムノキ亜科(マメ科カワラケツメイ亜科に含まれるミモサ連、いわゆるミモソイド・クレード)に共通する花の構造を示す。最大の特徴は、葉に接触や振動、あるいは温度変化などの刺激が加わると、小葉が対をなして瞬時に閉じ合わさり、続いて葉柄の基部にある葉枕と呼ばれる組織の働きによって葉全体が下垂する点にあり、刺激後数分から数十分をかけて元の状態に復元する。
オジギソウは中央アメリカおよび南アメリカを原産地とし、現在では熱帯から亜熱帯にかけての広い地域に帰化植物として定着している。道端や荒れ地、農地周辺など、日当たりの良い攪乱を受けた立地を好んで生育し、旺盛な繁殖力によって群落を形成することが多い。葉の急速な閉葉運動は、食害を試みる昆虫や草食動物に対して植物体を小さく見せ、また葉裏の棘を露出させることで、捕食を回避する防御機構として機能していると考えられている。加えて、接触運動によって水分の急激な喪失を招く昆虫の摂食行動そのものを妨げる効果もあるとされる。マメ科に共通して、根には根粒菌が共生し、大気中の窒素を固定することで貧栄養な土壌への適応を可能にしている。
オジギソウの接触傾性運動は、葉柄基部の葉枕と呼ばれる肥厚した組織内における、細胞の膨圧の急激な変化によって引き起こされる。刺激を受けると葉枕下部の細胞からカリウムイオンや水分が急速に流出し、当該細胞の膨圧が低下することで、葉柄や小葉が瞬時に垂れ下がる仕組みである。この膨圧変化は活動電位に似た電気的シグナルの伝播を伴い、刺激を受けた部位から離れた葉へも運動が波及することが知られている。また本種は、明期には葉を開き暗期には閉じるという就眠運動(ニクチナスティ)も示し、この現象は18世紀にフランスの科学者ジャン=ジャック・ドルトゥ・ド・メランによって初めて科学的に観察されたことでも知られる。植物体には各種のアルカロイドやミモシンといった含窒素化合物も含まれることが報告されている。
オジギソウは、触れると葉が動くという視覚的な面白さから、観賞用および教育用の植物として世界各地で親しまれており、イギリスの王立園芸協会からアワード・オブ・ガーデン・メリットを授与されるなど、園芸的にも高く評価されている。植物の急速な運動を示す代表例として、初等教育から高等研究に至るまで、植物生理学の教材としても広く用いられてきた。一方で、原産地以外の熱帯地域においては旺盛な繁殖力ゆえに農地や牧草地に侵入する雑草として扱われる場合もある。伝統医療の分野では、東南アジアなどの一部地域において根や葉が民間薬として利用されてきた歴史も持つ。
オジギソウは真正双子葉類(Eudicots)バラ類(Rosids)に属し、マメ目マメ科ミモサ属(Mimosa)に分類される。ミモサ属はかつて独立した亜科であるネムノキ亜科(Mimosoideae)に位置づけられていたが、近年の包括的な分子系統解析に基づくマメ科分類群作業部会の再編により、現在ではカワラケツメイ亜科(Caesalpinioideae)に内包されるミモソイド・クレード(Mimosoid clade)の一員として扱われている。ミモサ属はおよそ600種を含む大きな属であり、本種はその基準種でもある。接触傾性運動そのものはミモサ属をはじめマメ科の複数の系統に散発的に見られる形質であり、葉枕を介した膨圧変化による急速な運動能力が、独立して複数回にわたり進化した収斂形質である可能性が示唆されている。
第2版:2026-07-21.
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