
ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草、Akebia trifoliata(Thunb.)Koidz.)は、キンポウゲ目(Ranunculales)アケビ科(Lardizabalaceae)アケビ属(Akebia)に属するつる性の落葉木本である。近縁種であるアケビ(Akebia quinata)とともに秋の味覚として親しまれてきた植物であり、小葉が3枚からなる掌状複葉を持つことからその名がつけられた。日本では北海道から九州にかけて、また中国、台湾にも分布し、アケビよりもやや標高の高い山地や寒冷な地域にまで自生する耐寒性の強さを特徴とする。
ミツバアケビは、灰褐色の茎を持つつる性の木本であり、茎の表面には小さないぼ状の突起がまばらに見られる。葉は互生し、掌状複葉であるが、アケビが5枚の小葉からなるのに対し、本種の小葉は基本的に3枚(まれに5枚まで)であり、この違いが和名の由来となっている。小葉は卵形から卵状長円形を呈し、縁が波打つ、あるいは浅く裂けるといった変異が見られる点も特徴のひとつである。花期は4月から5月であり、雌雄同株ながら雌花と雄花を分けてつける。雄花は直径4から5ミリメートル程度で1つの花序に多数つき、萼片は淡紫色を呈する。雌花は雄花よりも大きく、花序の基部に少数つき、萼片はアケビよりも明らかに濃い紫褐色から暗紫色を呈する。果実は長さ6から10センチメートルほどの長楕円形で、アケビよりも大きく数も多くつき、9月から10月にかけて淡紫色に熟して裂開する。
ミツバアケビは日本の北海道、本州、四国、九州、および中国、台湾にかけて分布し、丘陵地から山地の明るい林縁に普通に生育する。近縁のアケビが人里に近い低山に見られるのに対し、本種はより標高の高い山地や寒冷地にまで自生し、下北半島や北海道においても野生個体が確認されるほど耐寒性に優れる。荒れ地や乾燥地でも旺盛に繁殖する適応力の高さを持ち、アケビに比べて生育可能な地域の幅が広い。つる性の茎で周囲の樹木に巻きついて光を求めて伸長する生育様式は、アケビ科に共通する生態的特徴である。また、アケビとの分布域が重なる場所では自然交雑がしばしば生じ、両種の中間的な性質を示すゴヨウアケビと呼ばれる雑種が知られている。
ミツバアケビの果実に含まれる半透明の果肉は糖分を豊富に含み、甘みの強い風味を持つ。つる性の茎にはトリテルペノイド系のサポニン化合物が含まれ、これらは近縁のアケビと同様、伝統的な生薬として利尿や消炎の目的で利用されてきた成分的基盤となっている。花には花弁を持たず、花弁状に発達した萼片が送粉昆虫に対する視覚的な誘引の役割を担っている。雌花の萼片がアケビよりも濃い色調を呈する点は、送粉を担う昆虫に対する視覚的シグナルの違いを反映していると考えられ、雌花が実際の報酬に乏しいにもかかわらず大きく目立つ形態を発達させている点は、昆虫を巧みに誘引する擬態的な戦略の一例として注目される。
ミツバアケビは、果実がアケビよりも大きく多産であることから、果樹として栽培される事例も見られ、山菜として若芽を「木の芽」と呼んで食用にする文化もアケビと共通して受け継がれている。つる部分は「木通(もくつう)」と呼ばれる生薬として東アジアの伝統医学に古くから用いられ、根や種子もそれぞれ木通根、預知子などの名で薬用に供されてきた歴史を持つ。丈夫でしなやかなつるは、籠や工芸品の材料としても利用される。近年では品種改良も進められており、大果性や自家結実性に優れた栽培品種が育成され、果樹としての需要にも応えている。
ミツバアケビは真正双子葉類(Eudicots)の中でも基部真正双子葉類に位置づけられ、キンポウゲ目アケビ科アケビ属(Akebia)に分類される。アケビ属はミツバアケビのほか、アケビ(Akebia quinata)など5種ほどを含む小さな属であり、いずれも掌状複葉とつる性の木本という生活形を共有する。ミツバアケビとアケビは近縁でありながら生態的地位をわずかに異にしており、生育標高や耐寒性の違いによってすみわけが生じつつも、分布が重なる地域では自然交雑によってゴヨウアケビと呼ばれる雑種が生じる点は、種分化がなお進行途上にある近縁種間の関係を示す興味深い事例といえる。アケビ科全体は、被子植物における木本性つる植物の初期の多様化を考える上で重要な系統群として位置づけられる。
第2版:2026-07-21.
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