
ユスラウメ(梅桃・山桜桃)は、バラ科(Rosaceae)サクラ属(Prunus)に分類される落葉低木である。学名はPrunus tomentosa Thunb.である。中国原産であるが、日本には古い時代に渡来し、庭木や果樹として各地で栽培されるようになった。早春、葉の展開に先立って、あるいはほぼ同時に淡紅色から白色の五弁花を枝いっぱいに咲かせ、初夏には光沢のある赤い球形の果実を実らせる。花と果実の両方を観賞・利用できる樹木として、古くから庭園や家庭果樹として親しまれてきた。
ユスラウメは株立ち状に枝分かれする落葉低木で、樹高はおおむね一メートルから三メートルほどになる。樹皮は暗灰褐色で、若い枝には灰白色の軟毛が密生することが大きな特徴であり、種小名のtomentosa(毛じゅう状の、の意)もこの性質に由来する。
葉は互生し、倒卵形から広倒卵形で、葉先は急に尖り、基部はくさび形となる。葉縁には細かい鋸歯が並び、葉の表面にも裏面にも柔らかい毛が生えるため、触るとビロードのような質感がある。葉柄は短く、柄にも毛が見られる。
花は葉の展開とほぼ同時に開き、直径一・五センチメートルから二センチメートルほどで、一花または二花が束生する形で咲く。花弁は五枚で、白色から淡紅色を帯び、雄しべは二十本から二十五本ほどある。花柄はごく短いか、ほとんど見られない点も特徴の一つである。果実は直径一センチメートルから一・五センチメートルほどの球形の核果で、初夏に鮮やかな赤色に熟す。果肉は薄く多汁で、中に球形の核(内果皮に包まれた種子)を一個含む。
ユスラウメの原産地は中国北部から中部にかけての地域とされ、そこから朝鮮半島を経て日本へと渡来し、古くから栽培植物として各地に広まった。現在では日本各地の庭先や公園、家庭果樹として植栽されており、寒さに強く育てやすい樹木として広く普及している。
日当たりの良い場所を好み、水はけの良い土壌でよく生育する。乾燥にも比較的強い一方、過湿な環境は嫌う傾向がある。開花期は三月から四月にかけてで、虫媒花としてハチ類などの訪花昆虫によって受粉が行われる。結実は六月頃に見られ、鳥類が果実を採食することで種子が散布されると考えられている。栽培下では株分けや挿し木によっても容易に繁殖させることができる。
ユスラウメの果実は糖分と有機酸をバランスよく含み、生食に適した甘酸っぱい風味を持つ。サクラ属の多くの種と同様に、種子(核の中の仁)にはアミグダリンなどの青酸配糖体が含まれることが知られており、多量に摂取した場合には注意が必要とされる。ただし果肉部分にはこうした成分はほとんど含まれず、通常の食用には問題がない。
落葉性の低木として、冬季には休眠芽の状態で低温に耐え、春先の気温上昇とともに一斉に開花する性質を持つ。若枝や葉に密生する軟毛は、乾燥や強い日射から組織を保護する役割を果たしていると考えられている。
ユスラウメは花と実の両方を楽しめる樹木として、日本では古くから庭木や生け垣、鉢植えとして親しまれてきた。特に初夏に熟す赤い果実は生食されるほか、果実酒やジャム、砂糖漬けなどに加工されることもある。江戸時代以前から栽培の記録があり、観賞用の花木として、また子供が実を摘んで食べる身近な果樹として、庭先に植えられることが多かった。
樹形が整いやすく剪定にもよく耐えることから、盆栽の素材としても利用される。また、耐寒性が強く育てやすいため、東北地方から北海道にかけての寒冷地でも庭木や果樹として栽培される例が見られる。中国においては薬用植物としても用いられてきた歴史があり、種仁が生薬として利用されることもある。
ユスラウメが属するサクラ属は、被子植物の中でも真正双子葉類、その中でもバラ上群、さらにバラ類に含まれ、窒素固定クレードのバラ目(Rosales)バラ科(Rosaceae)サクラ亜科(Amygdaloideae)サクラ連(Amygdaleae)に位置づけられる。サクラ属は広義には桜、梅、桃、杏、李、アーモンドなど多様な果樹・花木を包含する大きな属であり、ユスラウメはその中でも花や果実の小型さ、株立ち状の樹形、葉や枝に密生する軟毛などの特徴から、しばしばニワザクラ亜属(Microcerasus)に位置づけられる一群に含められる。研究者によっては、この一群を独立した属Microcerasusとして扱う立場もあり、その場合ユスラウメの学名はMicrocerasus tomentosaと表記される。
サクラ属全体は核果を実らせる木本性の系統として進化してきたグループであり、花弁が五枚、雄しべが多数、心皮が一個という基本的な花式を保持しつつ、種によって花序の形態や果実の大きさ、毛の有無などに多様な分化を遂げてきた。ユスラウメに見られる密な軟毛や小型で束生する花は、この属の中でも特徴的な形質分化の一例として位置づけられる。
第2版:2026-07-22.
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