
ピレア属(Pilea)は、真正双子葉類のうちバラ類(ロサイド)に含まれるイラクサ科(Urticaceae)に属する草本または低木の一群である。イラクサ科の中では最大の属であり、600種から715種ほどを含むとされ、熱帯から亜熱帯、温帯の一部にかけて世界的に分布する。同じイラクサ科に属しながらも刺毛(せいもう、いわゆる「イラクサ」特有の刺す毛)を欠く点が特徴であり、この点で近縁のイラクサ属(Urtica)などとは大きく異なる印象を与える。観葉植物として広く親しまれており、特にギンヨウピレア(Pilea cadierei)や、近年人気の高いコイン状の葉を持つPilea peperomioidesなどが知られる。
本属の植物の多くは多肉質でやわらかな質感を持つ多年生の草本または小低木であり、一部にはつる性や着生性を示す種も含まれる。葉は多くの種で対生し、まれに互生するものもある。葉腋には葉柄内托葉(葉柄の基部を包むように位置する托葉)を1個ずつ持つことが、本属を科内の近縁属と区別する重要な形質の一つとされる。また、イラクサ科に広く見られる特徴として、表皮細胞内に炭酸カルシウムの結晶体である鍾乳体(しょうにゅうたい、シスタリス)を含む点が挙げられ、これは葉の表面にしばしば線状や点状の模様として観察される。
花粉の弾発的な放出機構も本属の生理学的に注目される特徴である。雄しべが成熟すると急速に反り返り、その弾性エネルギーによって花粉を勢いよく空中に放出する仕組みを持ち、これにより風媒による効率的な花粉散布が可能になっていると考えられる。この特徴的な花粉放出の様子から、Pilea microphyllaなどは英名で「アーティラリープラント(artillery plant、大砲植物)」と呼ばれている。なお、近縁属とは異なり、本属の植物は刺毛や、それに伴う蟻酸やヒスタミン様物質を注入する仕組みを持たない点も、生理学的特徴として特筆される。
本属はオーストラリアとニュージーランドを除く熱帯、亜熱帯、暖温帯に広く分布し、特に大アンティル諸島や中央アメリカ、アンデス山脈周辺において種多様性が著しく高い。多くの種は標高500メートルから2000メートル程度の森林内、とりわけ石灰岩地帯や超塩基性岩地帯の岩場に多く見られ、湿潤で日陰となる環境を好む傾向がある。
生態的には、山地林の攪乱跡地や崖崩れ跡などに真っ先に定着する先駆植物としての性質を示す種も多く、樹幹や岩上に着生する種の中には、樹皮や岩の隙間に生じる高湿度の微気候を利用して、密生した植生の中での競合を避けているものもある。花粉は風によって運ばれる風媒であり、種子は前述の機械的な弾発散布のほか、渓流沿いに生育する種では水流による散布も生じていると考えられている。
本属の植物は多肉質の茎葉を持つ種が多く、これは湿潤な林床や岩場という限られた基盤における水分保持に資する適応形態と考えられる。イラクサ科に広く共通する特徴として、表皮細胞内に鍾乳体を形成する能力を持つ点が挙げられ、これは炭酸カルシウムを細胞内に蓄積する生理的機構によるものであり、力学的な支持や捕食者に対する防御に関与している可能性が指摘されている。
花粉の弾発的な放出機構も本属の生理学的に注目される特徴である。雄しべが成熟すると急速に反り返り、その弾性エネルギーによって花粉を勢いよく空中に放出する仕組みを持ち、これにより風媒による効率的な花粉散布が可能になっていると考えられる。なお、近縁属とは異なり、本属の植物は刺毛や、それに伴う蟻酸やヒスタミン様物質を注入する仕組みを持たない点も、生理学的特徴として特筆される。
本属は経済的に大きな重要性を持つ属ではないが、観葉植物としての利用は世界的に広く定着している。銀白色の斑紋を持つ葉が特徴のギンヨウピレア(Pilea cadierei)や、繊細な葉を持つアルティラリープラント(Pilea microphylla)、丸いコイン状の葉で近年人気を集めるPilea peperomioidesなどが室内観葉植物や吊り鉢植物として広く栽培されている。これらは比較的耐陰性が高く、管理が容易であることから初心者向けの観葉植物としても評価されている。
薬用利用としては、一部の種が中国の伝統医学において用いられてきた記録がある。ただし、本属全体としては経済植物としての利用は限定的であり、主たる価値は観賞用としての需要に支えられていると言える。
本属は、真正双子葉類の中でもバラ類に含まれるバラ目(Rosales)イラクサ科(Urticaceae)に位置づけられる。イラクサ科の中ではエラトステマ連(Elatostemateae)に属し、この連は近縁のレカントゥス属(Lecanthus)を姉妹群とする単系統群として分子系統学的研究により支持されている。
本属の属内分類については、長らく19世紀の単著的研究以来大規模な見直しがなされてこなかったが、近年の分子系統学的研究により属の単系統性が再検証され、系統関係に基づく新たな節(セクション)区分が提案されている。この研究では、花被片の数の減少や果実サイズの縮小といった形質が、種多様化の進行と相関しながら進化してきた傾向が示されており、動物散布への依存度が低い機械的な種子散布様式への移行や、より弾発性の高い花粉散布様式への移行が、本属の著しい種分化を後押しした可能性が指摘されている。また、この系統解析に基づき、かつて本属に含められていた一部の系統群が独立属アクデミア属(Achudemia)として復活させられるなど、属の境界そのものも見直しの対象となっている。
第2版:2026-07-25.
Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.