クロトン

概要

クロトン(Codiaeum variegatum)は、キントラノオ目(Malpighiales)トウダイグサ科(Euphorbiaceae)クロトンノキ属(Codiaeum)に属する常緑低木である。原産地はマレー半島からインドネシア、ニューギニア、オーストラリア北部にかけての熱帯地域であり、現在では世界各地の熱帯・亜熱帯で広く栽培されている。鮮やかな葉色と多様な葉形を特徴とする代表的な観葉植物であり、園芸品種は数百から1,000品種以上が作出されているとされる。日本では単に「クロトン」と呼ばれることが多いが、本来クロトン属とは異なるクロトンノキ属に属する植物であり、分類学的には別属である。

形態的特徴

樹高は通常1~3mであるが、自生地では5m以上に達することもある。幹は木質化し、枝分かれしながら密な樹冠を形成する。葉は互生し、革質で厚みがあり、光沢を有する。葉形は品種による変異が極めて大きく、楕円形、披針形、細長い線形、螺旋状、波状、深裂するものなど多彩である。葉色も緑色を基調として黄色、橙色、赤色、桃色、紫色、褐色などが複雑に入り混じり、葉脈のみが鮮やかに着色する品種も存在する。花は雌雄同株で総状花序を形成し、小型で白色から淡黄色を呈する。雄花と雌花は同じ花序上に分かれて付き、観賞価値は葉ほど高くない。果実は蒴果であり、成熟すると裂開して種子を放出する。

分布と生態

自然分布域は東南アジアからオセアニアにかけての熱帯地域であり、森林縁、二次林、海岸近くの低地林など、温暖で湿潤な環境に生育する。年間を通じて高温多湿な気候を好み、寒冷には極めて弱い。十分な光を受けることで鮮やかな葉色を維持するが、直射日光が強すぎる環境では葉焼けを生じる場合もある。一方、光量不足では葉色が緑色に近づき、斑紋が不明瞭になる傾向がある。熱帯地域では庭木や生け垣として利用されることも多く、多数の園芸品種が都市緑化や景観植物として植栽されている。

生理・化学的特徴

クロトンの鮮やかな葉色は、クロロフィルに加えてカロテノイドやアントシアニンなど複数の色素が組み合わさることによって形成される。葉色や斑紋の多くは細胞層ごとの遺伝的差異に由来するキメラ構造と関係しており、枝変わりによって新たな品種が生じることも少なくない。葉や茎を傷つけると、トウダイグサ科植物に共通する乳液を分泌する。この乳液にはジテルペン類をはじめとする刺激性化合物が含まれ、皮膚炎を引き起こすことがあるため取り扱いには注意が必要である。また、誤食すると口腔や消化器への刺激、嘔吐や下痢などの中毒症状を生じることがあり、人や犬、猫などのペットに対して有害であることが知られている。

人との関わり

クロトンは19世紀以降にヨーロッパへ導入され、その美しい葉色から観葉植物として急速に普及した。現在では世界中の園芸市場において代表的なカラーリーフ植物となっており、室内装飾、庭園植栽、公共空間の景観形成など幅広く利用されている。熱帯地域では生け垣や境界植栽としても多用され、葉色の違いを生かしたデザイン植栽が行われる。日本では寒冷地では屋外越冬が困難であるため、鉢植えとして室内や温室で栽培されることが一般的である。挿し木による栄養繁殖が容易であり、優れた葉色や葉形を維持したまま増殖できることから、多数の園芸品種が流通している。

系統的位置と進化的特徴

クロトンは真正双子葉類に属し、バラ類の系統を経てキントラノオ目に分類されるトウダイグサ科の一員である。分子系統学的研究により、Codiaeum属は同じトウダイグサ科に属するCroton属とは近縁ではあるものの、独立した系統を形成することが明らかとなっている。このため、「クロトン」という園芸名は広く定着している一方で、植物分類学上のクロトン属を指すものではない。葉の著しい多様性は熱帯林における光環境への適応や遺伝的変異の蓄積、さらに長年にわたる人為選抜によって一層拡大したものと考えられている。現在栽培される多数の園芸品種は、枝変わりや選抜育種を繰り返すことで成立したものであり、野生集団では見られない極めて多彩な葉形と葉色を示す点が本種の大きな特徴となっている。


第2版:2026-07-25.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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