カシュウイモ

概要

カシュウイモ(学名:Dioscorea bulbifera L. f. domestica(Makino)Makino & Nemoto)は、ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)ヤマノイモ属(Dioscorea)に属するつる性の多年草である。中国を原産地とし、野生種であるニガカシュウ(Dioscorea bulbifera L.)から選抜された栽培品種にあたる。地下の塊茎に加え、葉腋に形成される大型のむかご(珠芽)も食用となる点が特徴で、和名は生薬の何首烏(カシュウ)に見た目が似ることに由来する。

形態的特徴

カシュウイモは地下に暗褐色の球形の塊茎を形成する、つる性の多年草である。塊茎の表面にはひげ根が多数見られる。茎は他物に巻き付きながら伸長し、葉は心臓形で先端が尖り、対生あるいは互生して付く。

夏から秋にかけて、葉の付け根に小さな白色の花を咲かせるが、日本国内で栽培される個体には雄株がほとんど存在しないため、結実することは稀である。本種の最大の特徴は、葉腋に形成される大型のむかごであり、野生種のニガカシュウに比べて著しく大きく育つ点で区別される。このむかごは地上部にできる栄養繁殖器官であり、地下の塊茎とともに主要な食用部位となる。

分布と生態

本種の基となった野生種ニガカシュウは、日本の西日本や朝鮮半島、中国など東アジアの温暖な地域に自生する。カシュウイモ自体は中国において栽培化された品種であり、日本には食用作物として導入され、各地で栽培されている。

つる性の生育様式により、支柱やフェンスなどに巻き付きながら旺盛に成長する。栄養繁殖器官である大型のむかごを多数形成する性質は、栽培下での増殖を容易にする一方、野生化した場合には旺盛な繁殖力を発揮する要因ともなり得る。

生理・化学的特徴

野生種のニガカシュウには、ジオスコレチン類などの苦味成分やジテルペン系のアルカロイドが含まれ、強い苦味と一定の毒性を持つことが知られている。これに対し、栽培品種であるカシュウイモは、この苦味・毒性成分の含有量が著しく低下する方向に選抜されてきたと考えられており、この違いが野生種と栽培品種を分ける大きな特徴となっている。

塊茎およびむかごにはデンプンが豊富に含まれ、エネルギー源として優れた食用部位を形成する。また、他のヤマノイモ属植物と同様に、ぬめり成分として粘性多糖類を含む。

人との関わり

カシュウイモは中国において古くから食用作物として栽培され、日本にも伝来して各地で栽培されるようになった。地下の塊茎と地上部の大型むかごの両方が食用となる点は、他の多くのヤマノイモ属栽培種にはない特徴であり、収量性の高さから重宝されてきた。

近年では「宇宙イモ」の通称でも呼ばれ、その独特な見た目の大きなむかごが話題となり、家庭菜園や直売所などでの需要も見られる。調理法としては、塊茎やむかごを蒸す、揚げる、すりおろすなど、他のヤマノイモ属植物と同様の多様な利用がなされている。

系統的位置と進化的特徴

ヤマノイモ属(Dioscorea)は、単子葉類(Monocots)に含まれるヤマノイモ目(Dioscoreales)ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)に位置づけられる。ヤマノイモ科は世界の熱帯から温帯にかけて分布する系統群であり、つる性の生育形と地下貯蔵器官の発達を共通の特徴とする。

カシュウイモは、野生種であるニガカシュウ(Dioscorea bulbifera L.)の品種として位置づけられ、地上部に大型のむかごを形成するという野生種に由来する形質を保持しつつ、苦味・毒性成分の減少という栽培化に伴う選抜を経て成立したと考えられている。むかごによる栄養繁殖能力の発達は、ヤマノイモ属の中でも本種を含む系統に顕著に見られる適応形質であり、種子繁殖に加えて効率的な栄養繁殖を可能にする戦略として進化してきたと考えられている。



第2版:2026-07-29.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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