オオハンゲ

概要

オオハンゲ(Pinellia tripartita(Blume)Schott)は、サトイモ科(Araceae)ハンゲ属(Pinellia)に属する多年生の塊茎性草本である。日本(本州・四国・九州・南西諸島)、朝鮮半島、中国南東部に分布し、林床などのやや湿った半陰地に自生する。同属の近縁種であるカラスビシャク(Pinellia ternata)に比べて全体に大型であることから「大半夏」の名を持つが、和名の由来となった漢方生薬「半夏」とは基原植物が異なる点に留意が必要である。三裂した特徴的な葉と、仏炎苞に包まれた肉穂花序を持つ姿は、観賞用としても愛好されている。

形態的特徴

地下には球形から扁球形の塊茎を持ち、そこから毎年新たな葉と花茎を伸ばす多年草である。葉は塊茎から1~数枚を叢生し、葉柄は長く、しばしば30~40センチメートルに達する。葉身は三全裂し、小葉は卵状長楕円形から披針形で、先端は鋭く尖る。葉柄の基部や葉身の分岐部にむかごを生じることがあり、これによって栄養繁殖を行う点も特徴の一つである。花期には葉とは別に、あるいは葉に先立って花茎を伸ばし、その先端に肉穂花序をつける。肉穂花序は仏炎苞に包まれ、仏炎苞は淡緑色から紫色を帯び、上部は舷部として開出し、下部は筒状に肉穂花序を包む。肉穂花序の先端は鞭状の付属体として長く伸び出すことがあり、サトイモ科に特有の花序構造を明瞭に示す。

分布と生態

本州、四国、九州から南西諸島にかけて分布し、朝鮮半島南部および中国南東部(香港を含む地域)にも自生する。丘陵地や低山地の林床、林縁部など、直射日光を避けたやや湿潤な半陰地を好んで生育する。塊茎による多年生の生活史を持ち、地上部は生育期に展開したのち、休眠期には枯れて地下の塊茎のみが残る。むかごによる栄養繁殖に加えて種子繁殖も行うため、条件の良い環境では群落を形成しやすい。近縁のカラスビシャクが畑地や路傍などの攪乱地に広く進出する強い雑草性を示すのに対し、オオハンゲは比較的安定した林床環境を好む傾向が指摘されている。

生理・化学的特徴

ハンゲ属植物は、シュウ酸カルシウムの針状結晶(ラフィド)を組織中に多量に含むことで知られ、これが生の塊茎や葉柄を口にした際の強い刺激感や炎症の主因となる。この針状結晶に加えて、アルカロイドや配糖体、レクチン様のタンパク質など、複数の生理活性物質の存在が報告されている。近縁種であるカラスビシャクの塊茎は、加熱や発酵などの加工処理によって刺激性を減じたうえで生薬として利用されるが、オオハンゲについては基原植物としての公式な位置づけを持たず、含有成分の詳細や薬理作用に関する研究の蓄積は、カラスビシャクほど豊富ではない。

人との関わり

オオハンゲは、その端正な三裂葉と特徴的な花序の形態から、山野草として観賞用に栽培されることがあり、庭園や鉢植えでの育成例も見られる。和名に「半夏」を含むことから民間で生薬的な利用がなされる場合もあるが、前述のとおり中国の伝統医学における正式な生薬「半夏」の基原植物はカラスビシャクであり、オオハンゲを同様に扱うことは基原の混同にあたる点に注意が必要である。むしろ、生の状態では刺激性を持つ組織を含むため、誤って摂食した場合には口腔内や喉の炎症を引き起こす恐れがあり、取り扱いには注意を要する植物として認識されている。

系統的位置と進化的特徴

オオハンゲは、被子植物のうち単子葉類(Monocots)に属し、その中でもオモダカ目(Alismatales)に位置づけられる。オモダカ目はサトイモ科(Araceae)を含む系統群であり、同科はさらにサトイモ亜科(Aroideae)、その中のテンナンショウ連(Arisaemateae)に含まれる。ハンゲ属(Pinellia)は、同じテンナンショウ連に属するテンナンショウ属(Arisaema)と近縁な関係にあることが分子系統解析によって示されており、両属を含む系統群は東アジアを中心に多様化した一群として位置づけられる。ハンゲ属内では、塊茎の形態や葉の分裂様式、むかごの形成様式などの形質に基づいて種間の類縁関係が議論されてきたが、分子データに基づく解析によっても、オオハンゲとカラスビシャクをはじめとする複数種が比較的近縁な単系統群を形成することが支持されている。


第2版:2026-07-30.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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