確率測度の拡張

試行の全ての結果全体の集合である標本空間が高々可算集合の場合は試行の結果を集めた事象に対してのみ確率が定義される.従って,無限回のコイン投げなどといった場合には,そもそも確率を定義することが出来なくなって都合が悪い.

確率論における全体集合は,ある事象の全ての結果を含んでいる.それは標本空間とも言われる.例えば,$n$回のコイン投げの場合,標本空間の要素は$2^{n}$個あることになる.

このコイン投げの回数を$n$回から$n \to \infty$と試行の回数を無限に拡張することを考える.

まず,コイン投げの有限回の試行といったものの結果の全体集合はシリンダー集合[筒集合,cylinder set]と呼ばれる.この有限回の試行の結果を寄せ集めた全体の集合であるシリンダー集合を無限回の試行において測度を考える足掛かりとする.

シリンダー集合

定義:シリンダー集合[筒集合,cylinder set]

集合族$\mathcal{S}$が与えられているとき,\[X = \Pi_{Y \in \mathcal{S}}Y \]というカルテシアン積を考える.\[Y \in \mathcal{S}\]という標準射影[canonical projection]に対応するのは,\[p_{Y}:X \to Y \]となる.
集合族$\mathcal{S}$の逆像[preimage]は,\[ \cap_{i=1}^{n}p_{Y_{i}}^{-1}(A_{i}) = \{(x) \in X | x_{Y_{1}} \in A_{1}, \cdots , x_{Y_{n}} \in A_{n}\} \]となる.
ここで,$Y_{1}, \cdots ,Y_{n} \in \mathcal{S}$であり,$A_{i} \subseteq Y_{i} , 1 \leq i \leq n$,$x_{Y} \in Y$は$x \in X$である$Y$の要素である.
この集合族$\mathcal{S}$の逆像をなす関数の集合をシリンダー集合という.

有限なシリンダー集合上に測度を定義し,この測度が有限なシリンダー集合上において完全加法的であれば,のちに述べるホップの拡張定理,カラテオドリの拡張定理を用いて無限の場合に一意的に拡張することができる.

実は,シリンダー集合により生成される$\sigma$-集合族は$\mathcal{S}$上のボレル集合体$\mathcal{B}(\mathcal{C})$となることが知られている.

また,無限次元空間上の測度として重要なガウス測度[Gaussian measure]は無限次元ヒルベルト空間[Hilbert space]上においてはシリンダー測度である.

さらに,シリンダー集合全体は一般的には$\sigma$-集合族とはならない.

References

測度の拡張

定義:測度の拡張

空ではない集合$S$の部分集合の集合族$\mathcal{G}$と,その上の関数\[\nu:\mathcal{G} \to [0,\infty] \]に対して,$S$上の$\sigma$-加法族$\mathcal{F}$と測度$\mu$が存在し,かつ,\[ \mathcal{G} \subset \mathcal{F} \]を満たし,任意の$A \in \mathcal{G}$に対して,\[\nu(A)=\mu(A) \]となるとき,$\nu$は測度$\mu$に拡張される,という.

この拡張によって,有限の場合の構成を無限の場合の構成へと適用することができる.

Vita brevis, ars longa. Omnia vincit Amor.





















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